4.「メイドインジャパンと中国人の生活」 段躍中編 日本僑報社 2010年12月18日
副題 : 「中国若者たちの生の声」・「日本のメーカーが与えた中国への影響」
中小企業家同友会上海倶楽部代表 東アジアセンター外部研究員(協力会理事) 小島正憲
この本は、日本僑報社が主催する「第6回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集」である。テーマは「メイドインジャパンと中国人の生活」であり、応募の条件は「日本への留学経験がないこと」であったというが、この本に掲載されている文章は非常に上手い。わが社でも中国人留学生の採用試験で、いつも日本語の文章を書かせているが、下手なので閉口している。それに比べて、受賞者たちが来日経験を持っていないのに、これだけの日本語文章を書いているのに驚いた。
次に受賞者たちが、文章の中で電気製品や自動車などの日本製品を高く評価しているのはよくわかるが、タマゴボーロ、金鳥蚊取り線香、液体ムヒS、ドクターグリップ、白髪染め、使い捨て剃刀、炊飯器、不二屋キャンディ、ソーセージの切り口など、予想外のメイドインジャパン製品の優秀さを取り上げていることには、びっくりした。中には製品ではなくて、「日本製の“地震に面したときの沈着冷静な態度と正しい方法で自分を救うこと”」という思想、あるいは日本人の笑顔、日本製品の説明書などを、中国は輸入しなければならないという主張もあった。しかも高校1年生の作品もあり、その優秀さに脱帽させられた。また受賞者たちの多くが日本のアニメの優秀さにも言及しているが、学生部門の一等賞に「蛍の墓」の感想文が入っており、私はそれを読んで涙を流した。
日本製品を礼賛するだけでなく、自国への内省も忘れず、次のように書き連ねている受賞者がいることに、これまた驚いた。「今の中国の発展は、北京五輪や上海万博の開催など、これまで日本がたどってきた発展過程と酷似しています。そして、2009年、中国は日本を越えて、GDPが世界2位となり、私はとても嬉しく思いました。しかし、中国のGDP構成は、繊維、農産物、鉱業産物などの割合が高く、IT産業重工業などの割合が低いのです。一方、日本のGDP構成は逆で、特に電子製品やIT産業、自動車産業などは、中国より何倍も高いのです。私はこのようなGDP構成ではなく、ハイテク産業や重工業を振興するより他に、中国を発展させる道はないと思います。…創造性は国の魂であり人間の特権です。他人のものを模倣して盗用していたら、中華民族はまるで国際泥棒ではないでしょうか。中国5千年の底力を蘇らせるためにも、創造力の精神を日本から学び、独創性に富んだ中国らしい中国を創りたいと心から願っています」。
またある受賞者は友人から、「中日が戦争になったら、最初に寝返るのはお前らだ」となじられたと書いている。おそらく中国で日本語を学んでいる学生たちは、大なり小なりこのような偏見の目を受けていると思う。この作文コンクールは、そのような逆境の中で日本語を学んでいる人たちに、大きな励みになっている。やがては彼らが中日友好の架け橋に必ず成長していくにちがいない。その意味で、日本僑報社のこの試みを大きく評価しなければならないと思う。
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/~shanghai/newsletter.html/110110news350.doc
京大東アジアセンターニュースレター 第350号 (旧・「京大上海センターニュースレター」)
京都大学経済学研究科東アジア経済研究センター 2011年1月10日
------------------------
2月14日夜、偶然に検索した情報です。高く評価していただき、ありがとうございます。