25日(火)午前、東京・芝公園のプリンス・パークタワーホテルで『広東金融ハイテク・サービスパーク・セミナー』なるものが開かれた。広州を中心とした珠江デルタ地区を金融センターにしようという取り組みというので、早速出掛けてみた。広東省の省都、広州地区は、改革開放の早い時期から海外に目を向けた先進地域として知られており、中国の輸出入総額の4分の1を占める沿岸部の工業・貿易地域の中心。
そこがなぜ、金融センターなのかと思ったら、すでに2007年に「広東金融ハイテクゾーン」計画を決めて、国家発展計画にも組み込まれ、以来4年をかけて建設途上という。時は、ちょうどリーマンショック前後からスタートしたわけ。現在に至る世界経済の大異変を予知したのか、輸出基地だけではやがて行き詰ると見越して、金融の重要性に着目したわけで、華南人の“先見性”に改めてうならされる。今回のセミナーは金融ハイテクゾーンへの日本企業の進出を促す招致会だった。
広州と隣接する仏山市に総面積210万平方mの土地を確保し、220億元(2600億円)を投じ、商業、住宅エリア一帯の緑に包まれた金融都市を作るという計画だ。すでにIBM、富士通データセンター、中国人民保険集団(PICC)、フランス企業など67社が9月末までに進出を決めており、施設の建設に取り掛かっている。
もともと後背地に香港、マカオ、深圳を控えた中国の先進地区とはいえ、斬新な都市計画の中身を聞くと、「オフィス、住コミュニティ、ショッピング、芸術鑑賞」をミックスさせた公園式の総合パークとのことで、東京の“六本木ヒルズ”の発想を一つの参考にした、“拡大版”というイメージがあるようだ。
セミナーに出席した広東省政府の李悍东副秘書長は、東南アジアにも近い珠江デルタの立地を説明し、地域経済の将来に向けた産業構造の長期的転換を睨んだものであることを強調。また地元、仏山市の女性副市長である麦洁华さんは「仏山はブルース・リーの故郷でもある」と前置きし、地域の国際感覚を大いにアッピールした。
セミナーで挨拶した富士通・海外ビジネスグループ本部の片山隆教・執行役員はいち早く進出を決めた理由について、①中国でベスト3に入る電力供給余力が十分にある地域②有史以来、大地震が起きていない地理環境③地元政府の支援協力体制の充実、の3点を挙げた。東日本大震災の教訓が、ここでもデータセンター進出の決め手になったということだろうか。
中国で国際金融センターを目指す都市といえば、まず上海が頭に浮かぶが、十分な用地を確保し、バックヤード(後方支援)機能を備えた、香港、マカオとワンセットの金融都市を作るという発想に、広東人の意気込みを感じた。(記事、写真 杉山直隆)