2月24日、日本僑報社は第12回「華人学術賞」の受賞作品を発表した。大阪経済大学の博士号取得者、現在、中国江西農業大学経済貿易学院講師を務めている王崢博士が日本語で書いた博士論文『中国農村における包括的医療保障体系の構築』が受賞した。
大阪経済大学山本恒人教授は、次の推薦の言葉を寄せられた。中国社会の経済発展から取り残された農村部の医療保障問題について、新旧制度を実証調査で徹底分析、客観的視点から理論構築し貴重な示唆に富む解決指針を提示した。
本書は医療の包括性という視点から、すべての農村住民が平等・公平に医療サービスを受けられる農村医療システムの構築を目指し、治療とりわけ入院と重病に偏るのではなく、予防と公衆衛生をも含む医療保障体系の構築を提言している。そのため貧困と疾病、予防と治療、ベヴァリジ報告にみられる医療の包括性、さらにサービス方式と保険方式などについての理論検討を行い、保険方式を維持しながら包括的な医療保障を追求する可能性を検討している。また、補完的諸制度の仕組みを紹介、中国農村部における現在の医療保障体系の全体像を示した上で、先進地域浙江省での具体的なアンケート調査結果を通して制度の実施状況を究明。包括性追求の視点から農村医療保険制度の現状での到達点と問題点を把握することに努めている。最後に、医療保障内容の包括性と対象者範囲の包括性の二つについて、今後の中国農村部における医療保障制度の方向性を検討した。
王崢博士は1982年中国黒竜江省生まれ、2005年7月、中国東北財経大学ビジネス日本語学部卒業、2006年4月日本に留学、2011年3月に大阪経済大学で経済学研究科博士学位を取得した。現在は、江西農業大学経済貿易学院講師として活躍されている。
日本僑報社が2002年に中日国交正常化30周年を記念して創設した「華人学術賞」は、中国人博士の学術成果を日本社会に広く紹介することが目的で、この10年間で、すでに14人の中国人博士が受賞している。これまでの華人学術賞の受賞者は以下の通り。
首都経済貿易大学教授李仲生博士『中国の人口変動』、中国国務院僑務辧公室局長朱慧玲博士『日本華僑華人社会の変遷』、東洋大学教授王学群博士『現代日本語における否定文の研究』、清華大学教授楊艦博士『近代中国における物理学者集団の形成』、曁南大学教授陳海権博士『日本流通企業の戦略的革新』、慶応義塾大学講師康鴻音博士『近代の闇を拓いた日中文学―有島武郎と魯迅を視座として』、中国社会科学院日本研究所研究員呉懐中博士『大川周明と近代中国―日中関係の在り方をめぐる認識と行動』、中国社会科学院マルクス主義研究院研究員鄭萍博士『早期毛沢東の教育思想と実践』、華南師範大学教授陸小媛博士『現代中国の人口移動とジェンダー』、慶応義塾大学経済学部助手徐一睿博士『中国の財政調整制度の新展開』、南京師範大学教員劉燦博士『現代中国農村の高齢者と福祉』、早稲田大学博士晏英氏『近代立憲主義の原理から見た現行中国憲法』、中央大学博士羅小娟氏『中国における医療保障制度の改革と再構築』など。受賞後、彼らの学術成果は、日中両国特に研究者から高い注目を浴びている。