中国の大学生から、安倍首相への手紙(三通)
その二、国際関係学院日本語学部四年生
第7回中国人の日本語作文コンクール最優秀賞受賞者
胡万程
大学一年の時、高橋さんという留学生と週に一度、相互学習を始めた。しかし、1ヶ月たっても学習言語は上達せず、親しくもなれなかった。
僕たちは初級だったが、相互学習の間、僕は習いたての日本語を、高橋さんはたどたどしい中国語を話し続けた。二人とも本当は相手から生の母語が聞きたかった。しかし、生の母語を聞けず、楽しいはずの相互学習は、自分の能力を高めるためだけの『戦いの時間』のようだった。
僕は清華大学の笈川先生に相談し、アドバイスをもらった。「二人とも自分の利益ばかり考えすぎ、勉強じゃなくて、山登りなどに行ってみたら」
僕は半信半疑だったが、アドバイスに従い、高橋さんを香山へ誘った。すると、二人は母語で話しをし、互いに相手を思いやりながら登山できた。それがきっかけで、私と高橋さんは、相手を大事にするようになり、その後の相互学習もうまくいった。自分の利益より相手の利益を優先し、双方が利益を得る、つまりウィンウィンの関係になれたわけだ。
これは僕の個人的な体験であるが、中日の絆にも適応できると考える。無論、国家同士の絆ともなると、個人の関係ほど簡単ではない。しかし、原則は同じではないだろうか。
中日国交正常化から41年、この間、中日は関係を深めてきた。現在、日本の最大貿易国は中国であり、日本人の最多渡航先も中国だ。また、2007年、在日外国人中、中国人は一位、全体の32%を占める。しかし、日本人の中国に対する認識は、1978年から続く「外交に関する世論調査」では最悪の状況にある。2006年外務省の「日中関係に関する世論調査」では、日中関係は良好ではないという人が66.7%、良好と言う人はわずか6.9%だ。
歴史問題と領土問題が日中間の外交・友好関係の最大の壁と言える。外交の基本原則は自国の国益を守ること。しかし、自国の国益だけを追って、双方の国益を損なう結果になっていまいか。領土問題など、即刻解決が困難な問題は、双方、暫時、静観するという方法はとれないか。周恩来も「求同存異」を提唱している。
領土がどちらのものかを争う前に、お互いがその領土の資源を最大限に利用する協力体制を模索する。歴史問題は忘れないが、まず民間交流を図る。そのようなウインウインの関係を考えること、それこそ、中日の絆の出発点ではないだろうか。