日本湖南友好使者の湖南見聞録 その四
湖南の名所探訪 第4回 湘西大紀行(前編)-張家界- 多田州一
2011年秋、湘西の旅。それは私の湖南省における名所探訪の中でも、ひときわ印象深い旅行であった。国慶節(建国記念日)の大型連休を利用して、湖南省西北部(湘西)へと足を伸ばしたのだ。
実をいうと、以前からぜひ一度は行ってみたいと思っていたのだが、なかなかその機会を得られなかった。滞在していた長沙からは距離があるし、日数もかかるからだ。
私が申し込んだのは、「張家界・鳳凰四日遊(ツアー)」である。近年、中国では爆発的な旅行ブームにより、とくに休暇期間中、観光地はかなりの混雑に見舞われるようになった。それで、連休自体は一週間(10月1日~7日)あったものの、できるだけ交通渋滞等を避けるため、「10月3日に出発し、6日に帰ってくる」という旅行計画を立てることになった。
旅行の初日(3日)、私は朝7時半に長沙駅前に集合し、そこからの旅行社のバスに乗ってまず張家界方面へと向かった。大体5時間以上はかかったであろう。午後1時過ぎにようやく最初の観光地である索渓峪自然保護区に到着した。
昼食後、少々小雨がちらついたものの、さっそくこの地の著名な鍾乳洞である「黄龍洞」を参観した。薄暗い洞窟がほどよい程度にライトアップされ、小船で渡る水脈のほか、「龍宮」や「迷宮」と名づけられた一角もあり、面積はかなり広かった。数十万年という長い時間の中で形成された、数え切れないほどの「鍾乳岩」や「石筍」が列をなし、自然の神秘さを感じさせられた。
その日の晩、バスで張家界市に到着。同じツアーの観光客らとともに、現地のホテルに宿泊した。
二日目と三日目は晴天のもと、天下に知られた世界自然遺産「武陵源風景区」を見て歩いた。言い伝えによると、漢の劉邦(高祖)の軍師であった張良が、この地に逃れてきて隠遁したことから「張家界」というらしい。
武陵源は武陵山脈の南麓にある山岳地帯に位置し、風雨によって侵食された石灰岩の山が、石柱のように立ち並んでいる。深い森の中から高さ100メートルを超える奇峰群がそびえ立ち、まさに“山水画の世界”という雰囲気を醸し出している。
だが残念なことに、そこは私の予想をはるかに超える“人だかり”であった。頂上附近までは数基ある「天梯」といわれる大型エレベーターで昇るのだが、「天梯」の前には長蛇の列が立ちはだかり、何と4時間余も並ぶはめになった。その過程では、日本人観光客の団体とも出あった。
ようやく「天梯」の上(袁家界)までたどり着くと、目の前には広大な奇峰群が眼下に広がった。大自然の景観に圧倒され、感無量であった。
また、近くには土家族の民族村(袁家寨子)もあり、土家族の生活に関する展示品を見学することができた。彼らによる自家製の蜂蜜を購入したことも懐かしい思い出である。
夕方、バスで山の中腹まで下りた後は、徒歩で下山することになった。時折、人の群れに揉まれながらも、夜10時すぎにようやくホテルへと帰還。あわただしい日程のため、翌5日も早朝から金鞭渓と呼ばれる渓谷沿いを歩いて散策することになった。
実際、前日はかなりの強行軍であったが、金鞭渓では自由時間が多かったこともあり、少し早く集合場所へと戻ってきて、心地よい秋のそよ風のもと、のんびりと過ごさせてもらった。また、この日(10月5日)はちょうど私の誕生日でもあったことから、森林公園の入口前で、民族衣装をまとった土家族や苗族のお姉さんたちと一緒に記念写真を写した。
そして、昼食をとった後、張家界に別れを告げ、再び観光用の大型バスに乗って湘西の地を南下した。次なる目的地、芙蓉鎮および鳳凰古城へと向かったのである(続)。