10月31日付けの日本経済新聞夕刊一面に、前駐米大使 藤崎一郎氏のコラムが掲載されました。中国人の日本語作文コンクールを9年間も主催してきたものとして、とても有り難いと思いました。世界での日本語と日
本文化の普及は、日本の最大の安全保障であり、日本人と世界の人々との絆を太くなることにとても意義があります。多くの方に支援して欲しいし、コンクールを一層発展していきたいと思います。
ここで大使のコラムを転載して、皆さんと共有したいです。よろしくお願い申し上げます。
「うちの子、いまジャパンを勉強してるのよ」。ニューヨークからの電車で米人女性から話しかけられた。オバマ大統領の子女も通うワシントンの名門校シドウェル・フレンズ。十数年前から小学二年の半年間、日本の文化、生活などを教えている。こんな多様な文化はないと日本だけを選んだという。さっそく公邸に二年生全員を招いた。茶室を見せ、家人や大使館員が新聞紙でカブトの作り方を教えた。私もあやとりひもで手品を見せたあと、○×クイズを出してみた。首都は京都ですか、さよならはサンキューですか、などである。驚いたことに誰もが正解で勝敗がつかない。子供たちは親もよく知らない外国のことを学ぶのが得意なのだ。
子供、学生対象の「日本」クラス、まずここからだと思った。お茶、お花、俳句、歌舞伎もいい。宮崎アニメ、ハルキの小説、ジュンコやイッセイのファッション、千住博の画、アンドーや隈の建築、ジローの寿司、トヨタ方式、新幹線など手ゴマは多彩だ。伝統文化があって、それが現代に活(い)かされているから皆に面白いのだ。
日本に関心を持ったら、さあ次が日本語だ。文法や漢字や敬語は後回しだ。日常会話から入るのがいい。日本語はやさしいんだ、と思わせたい。「日本」教育と会話を教えるボランティアは多いだろう。研修を受けたシニア、主婦、学生らを外国に国費で送る。教材もオンラインで充実できる。
「日本語って難しいでしょう」と得意がるなんて愚の骨頂だ。どんどん中国語などのほうに行かれてしまう。経済が活気を取り戻し、オリンピックを控える今こそ日本、日本語を戦略的に広めるチャンスだ。