11月1日、都内で開かれた「日本華人教授会議」の会員総会で、新しい代表に選出された李春利氏(愛知大学経済学部教授、東京大学経済学博士)に、今後の抱負などについてインタビューした。
日本華人教授会議(The Society of Chinese Professors in Japan, SCPJ)は、学術研究水準の向上と学際的交流の拡大、日本における華僑・華人の社会的地位の向上、中国の社会経済と科学技術の発展への貢献、中日間の相互理解と信頼関係の促進、世界各国との対話と交流などを目的として2003年1月に発足(事務所:東京・神田)。
現在、華人教授会議は約100人の会員を擁し、日本全国の約60の有名大学の正教授以上の学者、もしくは各分野の専門家から構成されている。これまで多数の国際的な大賞や学術賞の受賞者を輩出してきたほか、会員の中から日本の大学史上初の中国出身の副学長が2名選出されるなど、頭脳集団として日本内外で幅広く注目されている。
公式サイト: http://scpj.jp/
――この度は新代表へのご就任、誠におめでとうございます!
新しい幹事会の推薦により、日本華人教授会議の新しい代表になりました。まず会員たちのご信頼を賜り、心から厚く御礼を申し上げます。正直なところ、驚きとともに重圧をひしひしと感じております。
これまでは人望が厚くて有能な2人の先輩(代表)に恵まれて、具体的な仕事をすればよかったのですが、これからはそうはいきません。
また、東京の一極集中を是正するということで、名古屋に住んでいる私を推薦していただきましたが、東京―名古屋間の300キロ往復の距離を考えると、正直なところ、気が重くなります。でも、お引き受けした以上は、苦労は厭わないつもりです。
――新旧代表のバトンタッチというわけですが、前任者にも声を掛けられたそうですね。
杜進前代表(拓殖大学教授)はこれまでの2年間、献身的な努力をなされ、いつも先頭に立って適確に陣頭指揮を執られてきました。そのおかげで、この間の難局を乗り越えることができたのではないかと思います。今回のシンポジウムの最後に、私は挨拶の中で、心から一言、「大変お疲れ様でした!」と申し上げました。
おかげさまで2014年の第11回会員総会とシンポジウムが無事に終了し、続いて会場を変えて開かれた懇親会も大変にぎやかでした。和気あいあいで本当に最高の雰囲気でした。「団らん」というのはまさにこういうことじゃないかと思いました。
――日本華人教授会議の今後の抱負は?
2003年1月に華人教授会議が創立して以来、おかげさまで団体運営の主体である幹事会にずっとおりましたので、教授会議には愛着があります。また10数年の間、教授会議が徐々に成長しつづけ、社会的な影響力が向上してきたそのプロセスも体験してきたし、また、直接携わってきました。そのような成長の過程における喜びや悩み、場合によって試練の苦しみも仲間たちと一緒に分かち合ってきました。
これからは会員および支援者たちのご支持をいただきながら、とくに3つのことを目指して努力していきたいと思います。
1)「サステナブルな教授会議」、つまり持続可能な体制づくりを進めていくこと。
21世紀はサステナビリティ、つまり「持続可能性」が社会共通の価値観になっています。華人教授会議もそれを目指して、これまでの歩みを振り返りながら、改善すべきは改善し、発展すべきは発展させていかなければなりません。創立からそろそろ12年を迎えますので、焦らずに自己点検を行いながら、仲間たちと一緒に持続的な発展が可能になる体制を構築していきたいと思います。
2)「和を貴ぶ教授会議」、すなわち、会員の親睦活動をさらに強化し、交流の機会をもっと増やしていくこと。
華人教授会議はせっかく日本で設立されたので、聖徳太子以来の「和を貴ぶ」という日本社会の伝統的な精神をこれまで以上に重んじていきたいと思います。中国の古典にも「和為貴」(和を以て貴きと為す)という古来の価値観があるので、日中の間には相通じる理念があるように思います。
華人教授会議は現在、日本全国で約60の大学や研究機関などで活躍している100人近い会員を擁しております。今後はさらに会員のニーズを把握し、例えば、専門分野を超えた学際的な交流や、またしばし仕事を離れて親睦を深める機会を増やしていくなど、会員サービスの充実化を図っていきたいと思います。
3)「行動する教授会議」、われわれの団体には最大公約数があるとすれば、おそらく「行動派」の集まりなのではないかと思います。
このすばらしい伝統をぜひみんなの力を合わせて継承していきたいと思います。大学教授といえば、すぐに「象牙の塔」というイメージが浮かびますが、私からみれば、教授会議のメンバーはむしろ「行動する学者集団」という色彩が濃厚です。現に、2人の会員が日本の大学史上初めての中国出身の副学長に選出されています。まさに快挙です。日本の主流社会で学問的な能力だけでなく、行政面の能力や社会的な行動力も認められたしるしともいえます。
今後は、各会員がそれぞれの職場や学界で活躍しているエネルギーとパワーをなにかの形で結集し、日中両方の社会や学術界で貢献できればベストです。ただ学際といっても今は細分化されている自然科学や社会科学、人文科学の間の壁が高く、一朝一夕で乗り越えられるものではありません。これから関係分野の専門家の知恵を拝借し、地道に地歩を固めていく必要があると思います。
これから華人教授会議をみんなで力を合わせて盛り上げていきたいと思いますので、そのためには、微力ながら努力を惜しまないつもりです。引き続きご支援、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
――ありがとうございました。貴会議のますますのご発展をお祈り申し上げます!
李 春利氏[略歴]
日本華人教授会議代表(2014年11月~)、愛知大学経済学部教授。
中国浙江大学講座教授、南開大学特任教授を兼任。愛知大学-中国人民大学-南開大学博士二重学位プログラム指導教授。愛知大学国際中国学研究センター中国事業責任者、人間文化研究機構現代中国地域研究・愛知大学拠点副代表。専門は中国経済論、エネルギー・環境経済論、交通経済論。
中国社会科学院大学院、京都大学を経て、1996年東京大学より経済学博士号を取得。米国ハーバード大学客員研究員、マサチューセッツ工科大学(MIT)国際自動車研究プログラム(IMVP)兼任研究員、東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員を歴任。
著書に『インドvs.中国 二大新興国の実力比較』『中国多国籍企業の海外経営』『国際金融危機後の中国経済』『中国製造業のアーキテクチャ分析』など約30冊。論文多数。著書・論文は日本語、英語、中国語で発表されるほか、ドイツ語、フランス語にも翻訳される。