日経とgooのビジネス情報サイトから8月8日に検索した情報です。
5 段躍中さん 「在日中国人大全」を出版した中国人留学生(ひと)
1998/ 04/ 26朝日新聞 朝刊p.3 792字
厚さ五センチ近い完成本を手に「これだけの中国人が日本で活躍しているんですね」。著者本人が驚いている。
四十歳の誕生日の十二日に出版された「在日中国人大全98-99」は、日本で活動する学者、実業家や中国系企業などのデータブックだ。人名は約一万人、企業や書物などの情報は約五万件。九百五十ページに及ぶ。注文販売が主だが、目標は「一万部!」。
二年前に百ページ弱の第一弾を出し、「在日中国人研究の必需品」と評価された。が、中身の薄さが不満で、すぐ次作の準備に入った。昨春買ったパソコンを武器に、一年弱で情報量十倍の本を仕上げた。
北京の「中国青年報」記者から一九九一年に留学で来日。すぐに買った電子手帳に、書店で見つけた在日中国人の著作を登録する日課が「大全」への一歩となった。
「一日中、データを整理していても飽きないんです。私、情報オタクだから」
「蛇頭」など犯罪絡みで中国人が取り上げられる機会が増えたことも、出版の動機になった。「一生懸命働いて、日本に貢献している中国人もいるんです」
中国でこうした本を出そうとしても、様々な規制で不可能に近いことは肌身に感じている。一方、離れて一層、祖国への思いは募る。来日後に生まれた三歳半の娘が中国語を身につけるよう、北京の妻の両親に預けたばかりだ。
大全には、八四年ごろから客死した在日中国人約百人の一覧もある。病気、自殺、殺人――。原因を論評抜きで並べた。中国には、いまだに日本を「黄金の国」とあこがれる庶民が多いが、「成功者だけじゃない。異国で生きる厳しさを知ってほしい」。
新潟大大学院で社会学を学ぶ。妻の住む埼玉県川口市と行き来する。いつか中国で日本人向け新聞を出したい。大全作りで卒業が一年延びたのは、助走期間と考えている。
(文・写真 及川智洋)
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だん・やくちゅう 「日本に来て何よりよかったと思うのは言論の自由です」