上海万博をめぐって(紹介)
原田 修
上海の古い街並みの再開発事業に関係するようになったのは、大阪府日中経済交流協会設立(1982年7月)直後の学術交流視察団がきっかけであった。
改革開放が宣言されてからまだ3年余のそのころ。
上海市民の悩みのタネは住宅と交通問題。
85年まで市長を務めた汪道涵は、中央に余剰金のすべてを吸い上げられて立ち往生の状態であった。
住宅事情の改善のためにと大阪と上海の専門家による共同考察が構想され、市内では南市区(当時)蓬莱路の石庫門住宅の改造、郊外は嘉定県(当時)の県城保存プロジェクトがその対象となった。
大阪から魚眼レンズを持った専門家が蓬莱路の街並みを撮っていたとき。
地元の住民に取り囲まれ、まるでスパイ活動でもしているかのように詰問されたことがあった。
郊外の嘉定県城へは片道40キロの道のりに3時間もかかるなど、仕事は決して楽とはいえなかったが、3回の訪中・調査で「共同考察」は一年後には完了、提言書をまとめあげることができた。
種蒔きはこのような苦労の連続であったが、成果は「共同考察」した専門家たちとのその後の交流にあったといえるだろうか。
かれらやその仲間、後継者たちが、のちに「上海万博」へのながれをつくっていったのであった。
立候補までの道のり
①~プロローグ
②~芽生え
③~アプローチ
開催決定のあとで
①~そのとき上海は・・・
②~会場
③~アクセス
④~「上海世博」のテーマ「城市、譲生活更美好」
Better City,Better Life
⑤~環境アセスメント
立ちはだかる課題
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問題は虐げられた国民が昨年政府機関に3千万件以上の陳情を行い、20人以上の規模の集団暴動が年間8万件を越え、しかも年率17%というペースで増加しているという事実である(http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/)。
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問題は「開発独裁」の是非に行き着くのかもしれない。
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「上海世博」会場の現場できょうも汗を流して働いているのは、いまも上海戸籍を与えられない民工たちである。かれらが「二等公民」の不平等から解き放たれたときこそ、この博覧会のテーマ「城市、譲生活更美好」が実現したといえるのではないだろうか(完)。
【参考文献】
斎藤和夫 編著 「大阪と上海の専門家による
上海都市計画共同考察 報告書(概要)」
(昭和59年10月 大阪・上海江蘇経済交流協会 編集・発行)
講演会報告 「上海の市街地再開発-<友好改造区構想>」
(85年9月24日@大阪商工会議所、『友好と貿易』第2号)
大阪市立大学経済研究所編「世界の大都市 2 上海」(東京大学出版会 86年)
<Ⅳ 上海・都市空間の形成、展望、計画>(斎藤和夫)
斎藤和夫 「上海・都市建設の今後」(89年6月「上海経済交流」16号)
岡田実成 <「花博-中国庭園」印象記>(90年6月「上海経済交流」20号)
斎藤和夫 「注目される浦東開発の方法 3.③ 上海万国博への準備」
(90年11月5日 新錦江ホテルにおけるセミナーでの発言「上海経済交流」22号)
汪道涵 「浦東行」(「小説界」89第一期、91年3月訳載「上海経済交流」23号)
斎藤和夫 「見えてきた上海・浦東開発」(91年12月「上海経済交流」26号)
はらだ おさむ 「北京五輪の開催・・・北京五輪から上海万博へ」
(01年7月「上海経済交流」63号)
新民周刊「上海万博開催決定 特集号」(02年12月9日号)
斎藤和夫 「上海万博2010への期待」(03年1月「上海経済交流」69号)
はらだ おさむ 「中国“全球化”の行方~上海万博、グロバリゼーション」(同上)
気賀澤 俊之 「上海における建築・都市デザインへの取り組みについて~
北外灘再開発・上海万博コンペなど」(04年10月「上海経済交流」76号)
『人民中国』expo特集(05年9月号)「万国博 愛知から上海へ」
特集 1 「上海は愛知万博から何を学ぶか」
特集 2 「上海万博が目指す『城市譲生活更美好』」
山之内 淳「2010年 上海万博を探る」(1)(2)(3)(webmaster@nicchu.com)
皇甫平 「改革を動揺させてはならない」(http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp)
関志雄 「市場化改革を巡る大論争―迫られる移行戦略の転換」(同上)
厳善平 「大上海の下層労働市場―高度成長を支える民工の現状報告」
(竹内 実+関西日中関係学会編<05年「ひょうご講座」講演集>)
読売新聞 「静かなる反攻-中国労働力神話の危機」(06年5月24日)
上海画報出版社 「外灘今昔」(1996年版)
木之内誠 「上海歴史ガイドマップ」(大修館書店)ほか各種上海地図
(以上)