神戸・南京町の南にある日本で唯一の華僑博物館、神戸華僑歴史博物館(神戸市中央区海岸通三)には、神戸華僑の歴史にまつわる展示物が並ぶ。世界華商大会の神戸開催に、林宏仁事務局長(32)は「脈々と作られた神戸華僑の文化を多くの人に知ってもらう絶好の機会」と歓迎する。
神戸華僑は、戦前から暮らしている「老華僑」やその子孫が約八千人。さらに、近年の中国の改革・開放路線を背景に来日した「新華僑」や留学生も急増している。
同館研究室長の安井三吉・神戸大学名誉教授(65)によると、戦前の華僑は対中貿易のパイプ役として不可欠な存在だったが、近年は日本企業が独自に中国とのつながりを持ち、華僑の役割は様変わりしているという。
かつて、日本の華僑の20%を占めた神戸華僑だが、現在、兵庫県内の中国人登録数は全国の4%程度。中国語が分からない老華僑の二世、三世も増えているという。
だが、安井名誉教授は「文化面での神戸華僑の役割は重要だ。同館のほか、孫中山記念館(移情閣、神戸市垂水区)、中華同文学校(神戸市中央区)など、中国を考え、日本に伝える環境に恵まれている」と話す。
「日中の国民感情が冷え込んでいるといわれる中、日中が共生してきた神戸が伝えられるものは多い」と安井名誉教授。「神戸市民にとっても、足元を見つめ直す大会になってほしい」と期待を寄せる。
林事務局長は「来年は併せて『日本中華年』でもあり、各地で中華文化を紹介する一連のイベントが開かれる。若い世代の意識を高め、日中の友好がはぐくまれることを期待する」と語った。(森本尚樹)
神戸新聞20060915