今回の訪日は、3日間という短いものであり、温家宝総理の来日前にはその短さを危惧したものであったが、実際には「氷」を溶かすのに十分「温」かいものであった。
中国の総理としてはじめて国会で演説し、歴史問題についても、時間を割いて中国の主張を述べていた。日本の「深い反省とおわびの表明」を積極的に評価するとした上で、「靖国神社」「慰安婦問題」といった言葉を用いず配慮を示しながらも、力強くうたっていた。
加えて、人道主義の立場から残留孤児の問題に触れ、また改革開放後に対する日本の経済支援、日本人の活躍に対する評価をはじめて中国政府から直接日本国民に伝えられたことは深く認識されるべくであろう。
また、温家宝総理の民間交流についても述べたい。早朝、東京都渋谷区の代々木公園にて、温家宝総理はジョギングし、公園にいた市民と太極拳を行った。
パフォーマンスと揶揄する声もあろう。テレビカメラが同行している以上、放映を全く意識していなかったとはいえないであろう。(編者は、そうは思わないが)仮に完全なパフォーマンスであったとしても、民間レベルにおいても、交流を深め、相互理解を促進しようとする態度は評価されてしかるべきではないだろうか。
この3日間は、氷を溶かす旅であった。もちろん、氷を全て一度溶かすのは難しい。しかし、何事にも一歩がなければ物事ははじまらない。そういった意味では、踏み出したのは素晴らしい一歩であったのではなかろうか。
日中友好・相互理解に関して、同じ志を持っている読者の皆様と、日中交流を日本僑報社・日中交流研究所は、できることを一歩一歩歩みを進めていきたい。