10月15日、日中専門の出版社・日本僑報社は、『
紹興日記―胡蝶の夢、戯曲「梁祝」公演へ』を刊行した。本書は、「『ポストモダン』の団塊、中国・紹興をいく」として、片雲の風に誘われるまま、中国をもっともっと歩きたい人のための知恵の玉手箱として刊行。時流を越え、時代を超え、『ポスト還暦』の生き方を探る―。
「紹興日記」は、著者が二〇〇七年から一年間、中国・浙江省紹興の紹興大学留学中に綴った日記である。紹興といえば紹興酒のイメージが強いが、筆者は紹興に文化の神髄を求めた。還暦を迎えた著者の姿勢は、定年を迎えようとする同世代の人々の参考となる指針が秘められている。
本書では、日時を特に定めず、日々つれづれに気のおもむくまま、枝垂れ柳の小枝が春風になびくように記している。その内容は、大学の授業風景から「呉越」の時代の都、魯迅の故郷でもある古都紹興の街並み、揚子江南の各地を訪ねた印象記など、中国四千年の悠久の歴史を俯瞰するように綴られている。特に江南の四季を彩る花々、その花々にまつわる「物語」を、周、春秋の昔から連綿と受け継がれた「詩経」や杜甫の情感あふれる美しい詩文を引用しながら中国伝統文化の精髄に触れさせようとする語り口は圧巻でさえある。
また、紹興の成果として、本書には中国で誰もが知る中国語版ロミオとジュリエット「梁祝」と魯迅著「孔乙己」を筆者が戯曲化し、脚本を収録。中国文化を知る好著。