チベットの村落の屋根にBSアンテナがとりつけられている。
九賽溝は九つのチベットの村落(賽)、溝は谷間を意味する。
1970年に発見されるまで人跡未踏(現地の人には失礼な・・・)の秘境であり、92年に黄龍とともに世界自然遺産に登録されて、いまのブームがある。
当然現地の実入りもよくなり、木造からレンガ建への住宅の改造が進み、谷間の村にBSアンテナの花が咲く。
これは結構なことである。
すでに行ってきた人間がこんなことを言うのは、まことに勝手なことではあるが、2キロにおよぶホテル街、平日8000人、黄金週間には2万人に及ぶ内外の人が観光に殺到するとあっては、もはや“秘境”とはいえまい。
ゲイト内は当然のことながらエコバスと徒歩での観光となるが、ゲイト外には整備不良のバスが黒煙をあげて往来している。
人が集まれば水・電力・燃料・食糧の供給と廃棄物処理の対応に迫られる。
水は豊富であり、水力発電所の建設がいまでも進められ、送電線が張り巡らされている。
送電ロスは一般に6~8%といわれているが、設備が悪いと数十パーセントに及ぶことがあるともいわれており、またそのロス率は距離に応じてふえるので中国のような広い土地では消費地近辺での発電装置の建設が最も効率的である。水が豊富にある九賽溝近辺でも村落間の距離は優に数十キロはあり、水力発電オンリーではなく自家発電の工夫はないのだろうか。特にシーズンオフが年4~5ヶ月もあり、渇水期には凍結することもあるようだから、水力発電所の増設は投資効率からみてもいかがなものか。素人的発想ではあるが廃棄物(ゴミ)発電は、技術的・効率的にみて現地採用は不可能なものであろうか。専門家のご指導を仰ぎたいものである。