本書は医療の包括性という視点から、すべての農村住民が平等・公平に医療サービスを受けられるような農村医療システムの構築と、治療とりわけ入院と重病に対する保障に偏るのではなく、予防と公衆衛生をも含む医療保障体系の構築を提言している。
まず貧困と疾病、予防と治療、ベヴァリジ報告の医療の包括性、サービス方式と保険方式などについての理論検討を行い、保険方式を維持しながら包括的な医療保障を追求する可能性を検討している。
そして、中国農村部における医療保障の制度内容とその展開を整理するために、農村医療保険制度の沿革を追うことによって、その創設背景や制度変遷を把握している。
また、補完的諸制度の仕組みを紹介することによって、中国農村部における現在の医療保障体系の全体像を示している。
続き、先進地域浙江省でのアンケート調査結果を通して制度の実施状況を究明し,包括性追求の視点から農村医療保険制度の現状での到達点と問題点を把握することに努めている。
最後に、医療保障の包括性という視点から、ベヴァリジ報告からその基本理念や内容を指針として、医療保障内容の包括性と対象者範囲の包括性の二つについて、今後の中国農村部における医療保障制度の方向性を検討している。http://duan.jp/item/127.html