中国の著名な社会学者である于建嶸博士の代表作として知られる『移行期における中国郷村政治構造の変遷―岳村政治』日本語版は、3月30日より発売された。
出版元の日本僑報社によると、本書は于建嶸教授の博士論文。于教授は1999年5月から2001年1月まで1年以上をかけて、移行期の中国農村政治構造の変遷を調べるため、毛沢東が戦時中に湖南の農民運動を調査した路線を踏まえ、農村社会に対する調査を行った。
この調査は2つの段階に分けている。第1段階は毛沢東が戦時中に調査した湘潭、湘郷、衡山、醴陵、長沙の5つの県の歴史状況を調べた。第2段階では衡山県を研究の焦点に絞り、特に衡山県の白果鎮および白果鎮内の研究対対象地区、「岳村」を特定し、歴史、制度、地方における権威について実証的に考察を行った。
本書はこうした考察と研究を基盤として、現行の中国の農村政治状況に対する理論分析のモデルを構築したものである。岳村の一世紀を超える政治関係、権力関係、政治コントロール、政治参加と政治文化の変遷過程に対する客観的の論述と分析を通じて、政治社会学と政治人類学の視点から、移行期にある中国の農村政治発展のプロセスと特徴について明快に検証したものである。
著者の于建嶸氏は、1962年湖南省衡陽生まれ、法学博士。現在中国で、もっとも注目されている社会学者の一人である。現在は、中国社会科学院農村発展研究所研究員、教授、社会問題研究中心主任。フィードワークを中心とした実証研究を行ってきており、著作では、《岳村政治--転型期中国郷村政治結構的変遷》、《中国工人階級状況:安源実録》和《中国当代農民的維権抗争:湖南衡陽考察》など多数。ツイッターに当たる新浪微博では130万人を超えるフォロワ―を持つ。
訳者の徐一睿氏は、1978年生まれ、中国上海出身。1997年来日、1999年慶應義塾大学経済学部入学、同大学の修士課程と博士課程を経て、2009年10月に慶應義塾大学の経済学博士号を取得。現在、慶應義塾大学経済学部助教。専門は財政学と中国経済。著書『中国の財政調整制度の新展開―「調和の取れた社会」に向けて―』(2010年、日本僑報社)は第八回華人学術賞と第11回日本地方財政学会佐藤賞(書籍の部)を受賞した。
「岳村政治」日本語版の監修者寺出道雄氏は、1950年生まれ、1974年慶應義塾大学経済学部卒業、現在、慶應義塾大学経済学部教授。著書『資本蓄積論』(1997年、慶應義塾大学出版会)、訳書『中国の地方都市における信仰の実態』(W.グロータス著)(1993年、五月書房)など多数。