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日本僑報電子週刊 第504号 2005年9月14日(水)発行
http://duan.jp 編集発行:段躍中(duan@duan.jp)
■段躍中日報 http://duan.exblog.jp/■
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『ジャパン スナップ―北京日報東京支局長として過ごした10年間』
★刊行特集★
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■目次■
●特別転載★内容紹介
目次
後記
訳者後記
著者プロフィル
監訳者プロフィル
訳者紹介
●編集後記★日中記者交換関連書籍のご案内
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●特別転載★内容紹介
日本植民地時代に日本との縁を結んだ著者は北京大学日本語科を卒業後、
特派員として日本に10年滞在した。本書に書かれているのは、その優し
く厳しい眼差しが見た当時の日本社会、日本の自然、日本の人々そして
忘れがたい取材記録など。半世紀に渡り、日本を深く理解したいと努力
し続けた研究者が両国の友好を願い、想いを同じくする夫人と共に綴っ
た日本生活10年間の思い出の数々。心やさしい中国人インテリ夫婦とあ
の頃を振り返り、日本を考え直す一冊。http://duan.jp/item/010.html
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●特別転載★目次
第一章 切れない縁
第二章 初めての日本特派員
第三章 庶民に溶け込む
我らが新居・一番寒い日・隣の一家・公害からの挑戦・スーパーマーケ
ットのカタカナ語・「下町の人情」を求めて・ふるさとの祭り・旧友と
の再会・五月病・『関白宣言』・新聞少年の日・歌舞伎町の悲劇・『お
しん』ブーム・東京人の生活リズム・二つの撮影賞・
第四章 忘れ得ぬ取材ドキュメント
「トラック野郎」と夜行四〇〇キロ・富士山登頂・花見に思う・靖国神
社を検証する・「殉国七士の墓」の謎・考古学上の新発見・
第五章 新たな始まり―中国社会科学院の殿堂に踏み入る
後記
訳者後書き
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●特別転載★後記
読者の皆様の前にあるこの本は、私と陳耐軒の共著で、主に日本特派員
時代の生活体験と若干の印象をまとめたものです。私たち二人は、多少
なりとも日本の方々とお付き合いし、中国人に対する日本の人々の厚い
情誼に深い感銘を受けてきました。日本滞在中は、日本の友人たちの応
援、協力を頂き、さまざまな階層の方々とふれあい、また取材する機会
に恵まれました。私たち二人は滞在期間も異なり、取材経験も同じとい
うわけではありませんが、かなり一致した印象を持つことから、その一
部を書き出し、本書に収めました。これらは水面に浮かぶ儚いきらめき
の類いにすぎません。しかし、すべて実体験であり、事実であり、忘れ
がたいものです。一冊の良きアルバムではあるでしょう。多くは二、三
十年前のできごとであり、記憶も薄れてしまい、頭の中に残っている印
象を頼りに筆を進めたため、一面的で足りないところのあることは免れ
ず、読者の方々のご叱正を請うところであります。
本書の執筆にあたり多くの日中の記者仲間や友人の励ましと応援をいた
だきました。とりわけ日本僑報社編集長の段躍中氏には度々具体的なご
助言、ご協力をいただきました。ここに謹んでお礼申し上げます。
駱為龍
二〇〇五年四月 北京にて
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●特別転載★訳者後書き
本書の翻訳にあたり、まず思い出したのが、留学時代に出会った北京の
中年以上の先生方でした。中国のインテリ層は決して恵まれた境遇には
なく、道端で卵を売るおばちゃんより収入が低いと、時に自嘲気味に話
す若いインテリの傍らで、「憶苦思甜」、今の平安に自足するかのよう
に静かに微笑む、哀愁を含みながらも強い希望と自信を胸に秘めた、私
の敬愛してやまない中国の本物の「知識分子」の姿です。本書の中で、
著者が当時の東京支局長、あの『日語趣談』(『日本語の面白さ』)で
も有名な劉徳有氏を評価したのと同じ、真面目で飾らず、ひかえめで優
しく、「不卑不亢」(外国に対し卑屈でも傲慢でもない)、そしてその
明晰な頭脳の角を見せない人たちです。
本書はそんなインテリジャーナリスト夫婦が一九七四年~一九八六年の
日本駐在中の思い出を中心に、日中友好への願いを綴ったものです。
その眼差しは自然で、まっすぐ。私たちは抵抗なく、第一次、第二次石
油危機あたりの日本の世相を思い出すことでしょう。しかし、七四年と
いえば、中国ではまだ文化大革命の最中、まさに日本の警察が中国人記
者をあからさまに監視するような時代でした。日本の戦時中のようにヒ
ステリックだったあの時代から来た中国人ジャーナリストの目の確かさ、
文革時代に訪中した人が、中国人はあんなもの真面目にやっていないよ、
とどこかに書いていましたが、有為転変の歴史を見てきた中国人本来の
冷静さ、醒めた頭、或いは現実的といわれる国民性の故か、「赤い」国
から来た偏見などは微塵も感じられないのではないでしょうか。靖国の
部分でさえごく客観的な描写で、これは注目に値すると思います。
また、八〇年代初め、私は二年間北京にいましたが、たしかに生活テン
ポの速さや桜についてなど、皆日本について同じような情報を持ってい
ると感じており、今考えればその出所はここだったのですね。『参考消
息』(参考ニュース)は今では読者の多い日刊紙です。
本書の内容は日本での経験が多く、日本人にとって目新しいものは多く
ないかもしれません。しかし、中国人記者とともに当時を振り返り、も
う一度二十年間で何がどう変わり、どう変わらず、どう進展したか、を
考えるのも一興でした。
七〇~八〇年代、日本は誰もが根無し草だ、何かがおかしいと言いなが
らも、一体何がおかしいのか答えを聞いた覚えがありません。今だから
こそ、自由主義と利己主義を履き違えてしまったといった分析が進んで
いますが。当時暴走族に対し、「自分の僅かな楽しみのためにどれだけ
の人が不眠に悩まされることか!」と、著者の発した本質的な一言が妙
に新鮮に感じるのは私だけでしょうか。変に優しく空しさを埋めている
のだ、と理解してやるのはどうだったのか。あの頃余り問題にされなか
った道徳観の欠如は二十年後の現在、軽くはマナーの崩壊、そして振り
込め詐欺などへ繋がりはしないか、最近悪質な犯罪に「三十代が多いね
」、と母が言うのは偶然なのかどうか。
わいせつ物の氾濫も、あの時は確かに形ばかりの歯止めがされましたが、
その後は結局、商業主義に流されるまま、陰湿な性犯罪を育てていない
でしょうか。
当時、大手メーカーなどが社名を次々とカタカナや英字に変え、行きす
ぎは誰の目にも明らかでした。そして二十年後の現在、日本語の乱れは
定見となり、お役所はカタカナ言葉を制限し、憂国の学者が美しい日本
語復活のためさまざまな本を出す昨今です。
五月病が取り沙汰された頃から、今では塾が一般化する一方、詰め込み
だ、ゆとり教育だ、学力低下だと右往左往する、この二十年で日本の教
育問題は進歩しているのでしょうか。
横須賀に住む人が、「時代から遅れるような不安を感じる」というので、
「どうして?」と聞くと、例えばコンビニのレジのスピードが横須賀は
のろいとのこと。東京人の生活リズムはさらに地域を拡大しているよう
です。
一方、一部では「スロー」の価値も見なおされつつあるようですが。
下町人情を懐かしみ、おしんに涙した後、おしんの「人の精神は物より
も大事」という反省、警告はもう喉元を過ぎてしまったのでしょうか。
二十年たっても、反省も解決も流動的、一時的で、日本は相変わらず根
無し草、確固とした座標軸が現われる様子はなく、もはや根無し草であ
ることすら問題になっていないのではないでしょうか。例えばこうして
二十年ごとの変化を総括して見るだけでも役に立つような気がします。
本書は日中の比較が主眼ではないため、日本の姿に対し、中国人の視点、
中国の事情を改めて書きこみ、日中の違いがはっきり分かるものとはな
っていません。けれど、中国人ジャーナリストがなぜこれらのテーマに
注目したのか、を考えた時、自ずから日中の違いが前提にあるのだろう
と想像はできます。役所仕事の効率問題、伝統文化の保存問題、新聞の
配達システムや青少年保護制度、わいせつ物の統制、はたまた富士山登
山の信仰的要素など、それぞれが面白いテーマです。
また、庶民レベルの話が多く、外国人ジャーナリストとして経験できた
はず著名人とのインタビューや、また国家レベル、社会問題への中国人
的考察があまりないという不足については、外国との友好を考えるとき、
普通の人間としての感情に共鳴できることが、実は最も有効であり、ま
た著者自身大上段に対決するような報道ではなく、中に入って体感する
取材を目指したからだろう、と考えています。
中国の報道の検閲的要素がよく取り沙汰されますが、その一方、留学時
代、日中関係の雲行きが怪しくなると、必ず日本の美だとか、寅さんと
か、技術とかの番組が唐突に現われたのを記憶しており、明らかに関係
改善、国家感情緩和のための友好という目的を持った操作を感じていま
した。この時期、七十歳を越えた中国の日本研究第一人者がこの本を出
される気持ちを私は感じ取りたいと思います。
その中で、靖国や殉国七士が突出しているように見えますが、これは誰
もが言う通り日本と中国の交流でどうしても避けられない問題ですので、
ないほうが不自然でしょう。しかし、実際、私が翻訳を通し最も興味を
引かれたのは、青島での植民地統治の様子や、靖国神社の「宝物遺品館」
や大灯篭のレリーフでした。なぜか? 知らなかったからです。靖国神
社の宝物館には近いうちに一度行って来るつもりです。私もあまりに知
らなさすぎました。
最後に、本書は日本語の翻訳と中国語の原文が併記されており、学習の
意味を兼ねて読まれる向きもあろうかと思いますが、まだまだ勉強中の
身であり、力不足とともに併記を意識した直訳とはなっていない点、何
卒ご了解頂き、また翻訳者育成と思し召して、厳しいご指摘をお待ち申
し上げます。
訳者代表 大場悦子
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●特別転載★著者プロフィール
駱為龍 1933年2月生まれ、浙江省杭州在籍。高級記者、研究員(教授)。
1956年北京大学東方言語学部を卒業。1974年1月から1986年2月の期間、
2度にわたり北京日報社の特派員として計10年間日本に駐在する。帰国後
は北京市記者協会副秘書長、中国社会科学院日本研究所所長等を歴任、
現在は中華日本学会及び北京中日報道事業促進会副会長等を務める。198
2年~1984年に北京市優秀ジャーナリストに三回選出され、1984年には全
国一級優秀ジャーナリストに選ばれる。1985年、日本短波放送主催のア
ジア外国記者コンテストにおいて「アジア賞」を獲得。
陳耐軒 1932年9月生まれ、浙江省鎮海在籍。副教授。1956年北京大学東
方言語学部を卒業。北京大学留学生事務室の通訳要員、北京大学東方言語
学部日本語教学研究室講師及び副主任を歴任。1987年、上海市科学協会に
よる「天使カップ」特別賞「ミニ家庭教師」を受賞。
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●特別転載★監訳者プロフィール
三潴正道 1948年生まれ。東京外国語大学大学院修了。現在、麗澤
大学中国語学科主任。日中異文化コミュニケーション研究会代表世話人、
而立会会長。時事中国語の専門家。各企業で日中異文化コミュニケーショ
ン講師として活躍。著書:『現代中国放大鏡』『時事中国語の教科書』な
ど。web上で毎週、中国時事コラム『現代中国放大鏡』を連載中。
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●特別転載★翻訳者紹介
大場悦子 而立会員
清本美智子 而立会員
野村和子 而立会員
而立会とは、2004年に三潴正道氏が中国の良書を日本に紹介し、相互理解
を深めることを目的に設立した翻訳者グループ。氏の考案した論説体中国
語レベル別学習システムのレベル30突破者で構成。現在会員数20名。
レベル別学習参加希望者は
へ
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●編集後記★日中記者交換関連書籍のご案内
来日15年、最大の引越を迎えている。今週から来週一杯まで、書類
の整理などおわれている毎日だ。そのため、ブログやメルマガの発信も
なかなか時間とれなくて、失礼しました。
中国人特派員が書いた日本/北京・中日新聞事業促進会編/林国本監訳
/関直美訳/1999 http://duan.jp/item/08.html
永遠の隣人―人民日報に見る日本人/人民日報東京支局長孫東民・于青
編著/段躍中監訳/横堀幸絵・鄭萍ほか訳/2002 http://duan.jp/item/46.html
東瀛八年―中国科技記者日本見聞/科技日報東京支局長呉仲国・張晶著
/2002 http://duan.jp/item/35.html
従昭和到平成―駐日十五年報道文集/光明日報東京支局長陳志江著/200
4 http://duan.jp/item/92.html
あのころの日本と中国―外交官特派員の回想/元北京日報東京支局長・
日中友好会館中国代表理事王泰平著、元毎日新聞北京支局長山本展男監訳、
仁子真裕美訳/2004 http://duan.jp/item/93.html
大陸逍遙―俳句と随筆で綴る体験的中国/元TBS北京支局長岩城浩幸・
岩城敦子著/2005 http://duan.jp/item/007.html
創業物語-在日中国人自述/中国国際放送東京支局長孫建和・庄志霞編/
黄星原・中国大使館報道参事官推薦/2005 http://duan.jp/item/013.html
ジャパン スナップ―北京日報東京支局長として過ごした10年/駱為龍・
陳耐軒共著/三潴正道監訳/而立会訳 http://duan.jp/item/010.html
春華秋實―日中記者交換40周年の回想/41名日中特派員経験者共著/
段躍中編/2005 http://duan.jp/item/015.html
段躍中@2005.9.14夜10時
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日中関係・華僑華人情報専門誌・毎週水曜日発行 編集発行:段躍中
1998年8月創刊・無断転載禁止。
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