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日本僑報電子週刊 第506号 2005年9月21日(水)発行
http://duan.jp 編集発行:段躍中(duan@duan.jp)
■段躍中日報 http://duan.exblog.jp/■
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★『中国の大学生 2万7187人の対日意識』刊行特集★
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■目次■
●特別転載★内容紹介 http://duan.jp/item/017.html
目次
後記
著者プロフィル
●編集後記★「日中」を考える好著!!
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●特別転載★内容紹介
中国の若者が「日本と日本人」にどんな思いを抱いているか、今後の日
中関係をどう見ているか、その「本音」を知ることは、日中の「相互理
解」を深め、「友好」を進める第一歩である。
日中両国の「相互理解」には、双方の政府と国民の努力が不可欠なのは
言うまでもないが、中国側の「対日意識」と、日本側(主に、政府)の認
識にどのような食い違いがあるのか、を知ることが先決である。
私どもは、十七年間、中国の大学と「日本語交流」を続けてきたが、日
本語を学ぶ中国の大学生の多くが、日本に熱いまなざしを注いでいる一
方で、自分達の思いが日本政府になかなか伝わらない苛立ちを感じてい
ることを知った。
中国の若者の「心のうち」を確かめて、それを日本側に伝えたい、と考
え、中国の大学生(日本語学習者)を対象に、【第一回】一九九九年三
月~六月、【第二回】二〇〇一年十二月~二〇〇二年一月、【第三回】
二〇〇四年十二月~二〇〇五年三月の計三回、アンケート調査を実施し
た。回答者総数は二万七一八七人に上った。中国の大学は九月新学年で、
アンケートに日本語で回答した学生の大半が二年生以上であり、回答者
の「重複」はほとんどみられない。
今後の日中関係で大切な人材である中国の日本語学習者(大学生、院生)
・二万七一八七人の「本音」をまとめたのが本書である。
―本書の「はじめに」よりhttp://duan.jp/item/017.html
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●特別転載★目次
一 「アンケート」の各質問に対する回答の概要
二 「日本」観と「日本人」観
(一)「日本」に親しみを感じますか?
(二)「日本人」に親しみを感じますか?
(三)「日本政府」と、日本人に「言いたいこと」は?
三 「歴史認識」について
(一)「四人に三人以上」が「歴史認識」に言及。「五
人に二人」が「靖国神社参拝」を批判
(二)各回答の中の「歴史認識」と「靖国神社問題」の割合
四 「相互理解」と「十年後」
(一)日中の「相互理解」はできていると思いますか?
(二)「十年後の日中」は、どんな関係にあると思いますか?
五 「日本」から、何を連想しますか?
六 「日中友好」へ、学生の願い
―「日本語作文コンクール」入賞作文から抜粋(二五編)―
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●特別転載★「アンケート」と「日本語交流」から学ぶこと(あとがき、
にかえて)
アンケート
(一)二万七一八七人の「対日意識」と、「歴史認識」の重さ
日中間の大きな溝
中国の日本語教育は一九七二年の国交正常化以来、拡大を続けている。百
二十を超える大学の日本語学部の学部生、院生に、第二外国語として勉強
している学生、日本語学校、中学、高校などの生徒を含めると、現時点で
日本語を学んでいる中国の若者は百万人以上に上っている。そして、大学
や日本語学校等々の日本語教師、学んだ日本語を生かして仕事に就いてい
る人たちを含めると、夥しい数の中国の人たちが「日本語」を通して「日
本」とかかわりを持っている。
なかでも、中国の「日本語学習者」は、今後、日中関係のさまざまな分野
で重要な役割を担う人材であり、彼らの「一人一人」が、何十人、何百人、
何千人の日本理解者を増やしてくれる可能性を秘めている。日本にとって、
大切な「友好の使者」である。
彼らの「対日意識」を知ることが、「日中友好」の出発点である。そこで、
中国で日本語を学んでいる大学生、院生を対象に、「日中友好」に関する
アンケート調査を、一九九九年四月から二〇〇五年三月まで、六年間に三
回、実施した。
「かつての日本の侵略が忘れられない」、「侵略したことに対する反省が
ない」という記述が目立ち、大学生の率直な日本観、日本人観が明らかに
なった。日本は、中国を侵略したにもかかわらず、侵略の歴史を「認めな
い、反省しない、謝罪しない」――というのが、中国の大半の若者の認識
である。
三回の「アンケート」を通して、歴史問題に関する中国の若者の「対日意
識」と、日本側(主に、政府)の認識の間に大きなギャップが存在するこ
とが明らかになった。友好的な日中関係を進める上で、まず、その溝を埋
める努力が日本政府に求められている。
そして、彼らの反日感情ないし嫌日感情の裏側にある日中友好の願いと将
来への希望を読み取ることができる。中国の若者の期待を裏切らないよう
にしたい。
中国へ明確な「反省と謝罪」を
日中間の最大の溝は、「歴史認識」についてであり、中国の多くの大学生
(日本語学習者)は、「日本は過去の侵略戦争を認めない、反省しない、
謝罪しない」と考え、日本の首相が靖国神社参拝を続けることに「反日」
感情を強めている。
日本を理解しようと努めている日本語学習者でさえ、一九九五年に「過去
の植民地支配と侵略」について「反省とお詫び」を表明した当時の村山富
市首相談話の存在を知らなかったり、知っていても直接中国と中国人民に
宣言されたものでないことに不満を持つ学生が多い。「日本語」とかかわ
りのない学生たちが、日本語学習者以上に日本の「歴史認識」に反発する
のは想像に難くない。そうした若者の意識が、中国政府の対日姿勢を支え
ている。
日本側の「歴史認識」がこれからの日中関係を左右するカギであることは
間違いない。日本政府は、アンケートで示された中国の日本語学習者の日
本への「批判」と「熱い思い」に応える段階である。
小泉首相は二〇〇五年八月十五日の首相談話で、「痛切な反省と心からの
お詫び」を表明した。だが、村山首相談話にあった「国策を誤り」という
表現は含まれていない。日本政府は、日中間の大きな節目の時に、明確な
「反省と謝罪」の意を表すことが両国の「歴史認識」の溝を埋めるために
必要である。
そして、内閣総理大臣は「十四人のA級戦犯が合祀されている靖国神社」
に公式参拝しない、という明確な態度を示すべきだ。「靖国神社参拝」イ
コール「日本が侵略戦争を美化すること」、というのが中国側の認識であ
る以上、その声に耳を傾けて、友好を目指すのは外交の基本である。終戦
記念日に靖国神社に公式参拝した中曽根康弘首相(当時)が、「近隣諸国
民の批判」を受けて、翌年の一九八六年から公式参拝を取り止めた経緯が
ある。
※ ※ ※
日本語交流
(二)「日本語教育」の役割と、「相互理解」の促進
日中友好への使命感
私は、これまでの交流を通して、「もし日本語を勉強しなかったら、私は
一生日本を恨んで、日本を正しく理解できなかったかもしれない」という
多くの学生に出会い、日本語教育が日中友好に貢献している実態を目の当
たりにしてきた。(「【六】「日中友好」へ、学生の願い」、参照)。
三回のアンケートでも「日本語を勉強してから、日本という国を深く知る
ようになり、親しみを感じるようになった」という学生の記述が目立って
多かった。「日本語」が中国の若者の日本理解の大きな橋渡し役を演じて
いる。
一方で、日本語教師〈中国籍〉をも対象とした「第二回」のアンケート調
査で、中国人の日本語教師の何人かが、「歴史認識や教科書問題が出るた
びに、その説明に困る。学生の日本語学習意欲に影響を及ぼしている」、
「歴史問題で、優秀な高校卒業生は英語学科に行くケースが多い」という
悩みを訴えていた。日本側の「歴史認識」が日本語教育の発展を妨げ、「
日本理解」の効果を半減させている。
日本語教育に携わっている多くの中国人教師が日中の相互理解と友好に貢
献している現実を忘れてはならない。折に触れて、ギクシャクする日中関
係の中で、日本語教育と日中友好への情熱と使命感に溢れた多くの中国人
教師に、日本人として感謝したい。
以下は、二〇〇五年四月中旬、中国人の日本語教師から届いたメールの一
部である。
「今こそ、日本語をよく理解し、かつ国際感覚のある若者の存在が必要で
す。中日友好のためには、常に冷静にものを考え、行動しなければならな
い、と学生たちに言い聞かせております」(曲維・遼寧師範大学副学長、
日本語学部教授)、
「子々孫々まで中日友好はわれわれの共通の願いである、と教壇でいつも
教えています。歴史認識が足りない日本政府に抗議するのは適切な方法で、
と教えました」(胡以男・山東師範大学日本語学部長)
「中国の大学生による反日デモはやっと沈静し、本当に嬉しいことです。
中日両国の交流と対話による相互理解の大切さをますます痛感させられま
した。これからも、微力ながら、一人でも多くの中国の学生の心の中に中
日友好の種を蒔き、その美しい花を咲かせるよう、頑張っていきたい」(
劉愛君・大連大日本語言文化学院日本語科助教授)
「日本」に関する情報提供と、若い日本語教師の育成
私どもは、十七年間に中国の二十六大学を訪問し、日本語学部の教師や学
生と交流活動を行った。遼寧師範大、北京大、南開大、東北財経大、北京
第二外国語学院、華東師範大学には、それぞれ三回以上、訪れ、日本語教
育の実情を見聞してきた。
「日本の資料が足りない」、「新しい日本語の教材がない」、「教えてい
る日本の内容に自信がない」という訴えをしばしば耳にした。中国の大学
では、日本を客観的に理解し、認識するための情報や資料が極端に不足し、
日本を正しく理解しようとしても、今の日本に関する教材が足りないのが
実情だ。中国政府の厳しい情報管理の一面も否定できないが、現実には、
多くの大学が日本を知るための教材不足に頭を痛め、新しい情報を求めて
いる。
現在、四百人以上に達するとみられる中国の大学で日本語を教えている日
本人教師には、大きな悩みが二つある。一つは、「日中関係が波立つたび
に学生の気持ちが揺れ、日本語を勉強したことを後悔する学生さえいる」
ということ。二つは、日本に関するテキスト不足だ。日本人教師の多くは
日本に一時帰国した際にさまざまな資料をコピーして戻り、授業で使って
いる。「初めて会った日本人」が「日本人教師」という学生が珍しくない
中国の大学で、相互理解を深めるために日本人教師が果たす役割はますま
す重要になってくる。日本の情報を提供することは日本の責務ではないか。
日本側の「歴史認識」と、日本に関する教材不足が、中国の日本語教育に
影響を与える重大な要素になっているのは間違いない。
国際交流研究所は、「日本語教材『日本』(上、下)」を独自に編纂し、
これまでに三万冊以上を中国の大学に寄贈したが、多くの大学で、日本理
解の教材として使われている。政府や公的機関は、もっと中国の大学に日
本を理解してもらう資料や情報を提供することに力を注ぐべきではないだ
ろうか。(「【七】国際交流研究所の「日中交流」活動」、参照)。
さらに、日本語教師の間に、日本政府に対して「日本語教師の養成」と「
日本での教師研修」を望む声が根強い。「第二回」のアンケート調査では、
「日本語教師なのに、日本へ一度も行ったことがない」という日本語教師
が回答者四六七人のうち約三割を占め、「中国人の日本語教師の養成に力
を入れてほしい」、「日本語教師の知識更新のために、日本への研修のチ
ャンスを作ってほしい」という要望が最も多かった。
中国側の声に応えるため、日本は何ができるか。例えば、1.毎年、中国の
日本語教師の卵(日本語や日本語教育を研究している大学院生)を数十人、
二~三週間日本に招待し、各分野の人たちと交流する。2.大学の経験五年
以内の若い日本語教師を十数人、日本に招待し、一ヶ月ぐらいの短期研修
を行う。――いずれかの活動を、日本政府や国際交流基金、さらに、中国
に進出している日本企業に提案したい。そうした活動は確実に日中の相互
理解を深め、友好の輪を広げることができる。
日本は、中国との様々な文化交流活動の中で、「日本語交流」活動を「平
和戦略の一つ」と位置づけて、中国の日本語教育の発展にもっと積極的に
協力すべきではないか。一人の日本人として、中国の日本語教育の発展と、
日本語を通した「人と人」の民間交流に力を尽くしたい。
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●特別転載★著者プロフィール
大森和夫(おおもり かずお) 1940年東京生まれ。早稲田大学政治経
済学部政治学科卒。朝日新聞記者(政治部、編集委員など)を経て、1989
年に国際交流研究所を設立。現在、日本語学校「上海朝日文化商務培訓
中心」理事長。
大森弘子(おおもり ひろこ) 1940年京都府生まれ。京都女子短期
大学家政学部卒。日本語教材『日本』・編集長。
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●編集後記★「日中」を考える好著!!
この本は、国際交流研究所の大森和夫・弘子ご夫妻の最新刊であり、
日本僑報社から刊行した三冊目の本です。十数年以来、ご夫妻の中国大
学生に対する支援実績は、二千年以上ある日中交流歴史において、大変
珍しいと言われています。そのため、10月7日に、ご夫妻は「東亜同文書
院記念基金会」から表彰されることになりました。こころからおめでと
うございます。
なお、日本僑報社から刊行した大森ご夫妻の著書は以下の通りです。
中国の1万2967人に聞きました。http://duan.jp/item/38.html
「中国の大学生」発 日本語メッセージhttp://duan.jp/item/96.html
中国の大学生 2万7187人の対日意識http://duan.jp/item/017.html
段躍中@2005.9.21午前10時半
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日中関係・華僑華人情報専門誌・毎週水曜日発行 編集発行:段躍中
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