地理的にも経済的にも、日中は切り離せない関係になってしまっている。嫌いだからといって、相手を無視し、付き合わないのは子供の喧嘩だ。好きであれ嫌いであれ、相手を十分研究、理解するのが大人のやり方である。何かもめ事があっても、日本の意見を主張すると同時に、中国の言い分も聞いてみなくてはならない。
この「中国の言い分」を知り、中国を理解するうえで、『中国は主張する』は最高の書だ。著者の葉小文氏は政治、経済だけでなく、文化や宗教にも造詣が深い。「望海楼」は人民日報海外版に連載中のコラムなので、ある程度中国側の公式な見解を代表しているとも言える。また、氏は新日中友好21世紀委員会の中国側委員も務めており、訪日経験もあるので、日本の事情にも詳しい。
葉小文氏の文章を読めば、「引っ越しのできない隣人」中国への理解も深まり、よりよき日中関係を形成でき、それは日中平和友好条約締結三十五周年のよき記念となることは間違いない。
特に氏は205名の中国共産党中央委員会委員の一人で、大臣クラスの幹部でもある。そういった意味でも、彼の発言にはとても重みがある。
この本は、日本の政府関係者、中国問題研究者だけではなく、一般の読者にも読んでほしい。お互いにどのように考えているのか、これからの日中関係をどのように発展させていくべきか、氏の著書ではいろいろな視点が提供されていると思う。
外交に関する世論調査(内閣府)では中国に対する親近感(平成23年10月現在)に関して、次のようなデータがある。
「親しみを感じる」とする者の割合が26.3%、「親しみを感じない」とする者の割合が71.4%。このデータにも反映されているように、日中関係はとても厳しい時期に入っている。
厳しい時期だからこそ求められる中国と日本の対話と理解。そのために、まず相手の言い分を真剣に聞くことから始めるべきではないだろうか。
『中国は主張する』http://duan.jp/item/124.html