◆留学生の一言がきっかけで 25年前、政治部記者として留学生問題を取材していた著者(大森和夫)が聞いた、ある中国人留学生の一言。「奨学金をもらえないので、四十以上のアルバイトを経験しながら留学生活を送っている。
日本が嫌いになって帰国する留学生が少なくない。もっと日本のことをたくさん知って、理解したいのに」……。彼の言葉を聞いて、「何とかしなければ」という思いが募った。「せっかく日本に留学して日本語を勉強している外国の若者が、日本を嫌いになって帰国してしまうのは、日本にとって大きな損失」。
◆自宅の四畳半から始まった 「日本で学ぶ留学生や、海外で日本語を学ぶ一人でも多くの学生に、日本を好きになってほしい」。そんな思いで、著者は半年後の1989年に49歳で新聞社を辞め、夫婦で日本語の学習情報誌「季刊誌『日本』」を発行、国内のほか中国など海外の大学に寄贈したのが「日本語交流活動」のスタートだった。仕事場は自宅マンション四畳半の「国際交流研究所」。留学生や、短期留学で日本にやって来る中国の学生や教師たちと、時に和食を囲みながらの活発な交流の場所になった。
◆日本語教材と作文コンクール 8年間に33号まで発行した「季刊誌『日本』」は、中国の130以上の大学に25万冊以上を寄贈。1995年から5回の改訂を重ねた「日本語教材【日本】」も、合計5万冊以上を寄贈した。すべて“夫婦手作り”で、日本の最新事情を反映した内容が学生や教師の感動を呼んだ。さらに、「国際交流研究所」主催の「日本語作文コンクール」は通算19回実施、学生から送られてきた「日本語作文」は19万9758篇にのぼる。本書には、これらの教材の活用事例や、作文コンクール応募者からのメッセージも多数収録している。