日中対立を超える「発信力」 段躍中編
新聞やテレビ、通信社の中国特派員として勤務中か勤務経験のある記者らの生の声を集めた一冊。
「『派手な状況』に集中する業界内部の論理に振り回され、等身大の中国を伝えられていないのでは」--。そんな言葉に象徴されるように、記者たちが中国の全体像を伝える難しさに苦悩しながら、仕事に向かう姿が浮かび上がる。
おなじみの反日デモや圧政の一方に、それとは無縁で、穏やかな中国一般市民の表情がある。報道現場では、偏った目で中国を見ているわけではない。むしろ現場を知らずに指示を出す東京(本社)に、普遍的だが一筋縄ではいかない課題があるのを感じた。書籍は、中国問題に限らない優れた報道論だ。記者にとっては大先輩たちの、率直な報告が胸に響いた。(日本僑報社、1350円)(祐)
(2013年10月20日読売新聞)