アジア解放という大志を抱き、中国の辛亥革命(1911年)を支えた日本の革命家、宮崎滔天(1871-1922年)の意志を汲む、民間の日中交流の集まり「滔天会」の文化講演会が4月5日、東京・西池袋の豊島勤労福祉会館で、会員ら50人余りが出席して開かれた。日本僑報社の段躍中編集長が司会進行を務めた。
講演会では、「日本人女性翻訳家たちが見た中国と日中文化交流」と題して中国語翻訳に携わる日本人女性翻訳家4人が講師として登壇した。日中で活躍する女性翻訳家が集まり、翻訳や文化交流をテーマに講演するのは同会では初めて。
中国語翻訳の第一線で活躍する翻訳家で大学講師の泉京鹿氏(北京滞在16年)、フリーライターで翻訳者の小林さゆり氏(北京滞在13年)、また日本僑報社の新刊、金燦栄著『中国の未来』の訳者である東滋子氏、同社新刊の胡鞍鋼著『中国のグリーン・ニューディール』の共訳者の1人である石垣優子氏の4人が翻訳の現場や中国生活の実体験を通して学んだことなどをそれぞれ語った。
なお東氏と石垣氏、石垣氏と共訳者の佐鳥玲子氏は、いずれも日本僑報社創設の日中翻訳学院の講座修了生。
■泉氏―「翻訳の喜び知り、多くの人が携われば」
講演会の中で、中国の文芸作品を中心に2011年までに十数冊を翻訳した泉氏は、文芸翻訳は「時間がかかる割に経済効果の悪い」大変な仕事であるものの「日本で知られていない作品や作家を発掘する楽しみがある」といった喜びがあると強調。その上で、中国に関心のない日本の若い世代らに興味を持ってもらうためにも「できるだけ多くの人に翻訳に携わってもらい、中国の様々な事情を紹介してほしい」と呼びかけた。
小林氏は「13年の北京暮らしで見たこと、感じたこと」をテーマに講演。とくにここ数年悪化した日中関係のもとで体験した北京の人々との温かなふれあいについて触れ、「日中関係は今、残念な時期にあるが、個々の交流を大切に思う人が増えれば両国関係もきっと変わっていくはず。身近なところからでも確かな交流を続けたい」と民間交流の大切さを訴えた。
■石垣氏―「定訳を調べることも勉強に」
東氏は『中国の未来』を翻訳出版してから体験したという感動的なエピソードを紹介した上で、今後も翻訳を通じて「日本と中国をつなぐ懸け橋の1つになれたら」と意欲を語った。
石垣氏は『中国のグリーン・ニューディール』を翻訳していた時の苦労話を披露。師事する日本僑報社・日中翻訳学院の武吉次朗教授の「定訳があればそれを踏襲しなければならない」という教えに従い、図書館で定訳を1つひとつ確認するという作業に追われたが、それもまた「勉強になった」と話していた。
講演会を終えた段編集長は「翻訳家として第一線で活躍する女性たちが、率直に自分の考えや中国での生活体験を報告したことは日中相互理解につながるものだ。両国関係は難しい中にあるが、こうした体験をどんどん発信することは信頼関係づくりに重要。民間交流を通して、小さなことからでも相互により親近感が持てるよう、オールジャパン、オールチャイナで努力することが大事では」などと述べていた。
この日の文化講演会と日中中日翻訳フォーラムの模様は、地元の地域密着型インターネットテレビ「池袋テレビ」が取材。後日、同テレビの公式サイトで、ネット動画が配信される予定になっている。
http://ikebukurotv.com/