
隠され、忘れられてきた歴史に光を
1923(大正12)年9月1日の関東大震災では、東京・神奈川近辺で、氏名が判明しているだけでも6百名余の中国人労働者が軍隊・警察・民衆により虐殺されました。名前の不明な人も入れると犠牲者は全体でも700名以上と言われています。「僑日共済会」の責任者として中国人労働者の権利擁護に奔走していた留学生の王希天氏(27歳)は、震災の被害調査と救援にあたるなか軍隊に密殺されました。9月12日のことです。
当時、関東大震災の甚大な被害に強い同情を寄せ官民共同で広範で迅速な救援の手を差し伸べていた中国社会は、10月に至り帰国した生存者による中国人虐殺の報に激昂し、各地で大規模な追悼会が催され、日本に対する怒りは頂点に達したといわれます。
当時の中国政府は「犯人処罰・補償・在日中国人の安全保証」を日本政府へ要求しますが、中国政府恐れるに足らずとみた日本政府は、中国人虐殺の事実を徹底的に隠ぺいし、一旦は閣議決定した遺族への賠償も履行しませんでした。
震災の戒厳令下で軍・警察の主導によって流布した流言蜚語は、日清戦争以来の侵略と朝鮮植民地支配で作られた日本社会の民族抑圧・排外感情を高ぶらせ、民衆自らが朝鮮人・中国人虐殺に手を染めることで、その後の長い泥沼の侵略戦争に駆り出されることになりました。関東大震災における中国人虐殺の歴史事実は、安倍政権が「戦争できる国」へとひた走る今だからこそ、日本社会の忘れてはならない記憶として取戻し、刻み直さなければならない課題です。
未来へつづく91年目の歩みを共に
未来のために歴史を以て鑑とし日中双方の社会へ歴史を発信しようと、関東大震災90周年にあたる2013年9月8日、「関東大震災で虐殺された中国人労働者を追悼する集い」を東京で開催しました。「集い」では、王希天さんの遺族と90年を経て初めて来日した中国浙江省・温州の労働者の遺族と共に、日本政府に対し関東大震災における中国人虐殺の真相究明と責任を誠実に果たすことを要求し、日本社会の歴史として次の世代に伝える努力を確認し合いました。
本年3月2日には中国・中央電視台の人気インタビュー番組「面対面」が遺族へのインタビューや日本での90周年の取組みを放送しています。
去る5月には温州で240名の遺族が参加して「関東大地震 被害中国旅日華工遺族聯誼会(準備会)」が発足し、本年9月には温州から20名近い遺族が来日される予定です。
関東大震災90周年を機に、歴史の隠ぺいに抗い、虐殺の記憶を日本社会に刻むため苦闘してきた先人と繋がり、受難者の遺族と結び合って二度と歴史の悲劇を再演させない為に明日へ歩み始めた思いを込め、別記のように91年目の取組みを計画しました。
皆様のご検討いただき賛同を賜りたくお願いする次第です。
お力添えのほど、よろしくお願い申しあげます。
2014年7月7日
関東大震災中国人受難者を追悼する会
呼びかけ人:
内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)、
梶村太一郎(在ベルリン ジャーナリスト)
加瀬純二(ふれあい江東ユニオン事務局長)
川見一仁(中国人強制連行を考える会事務局長)
小林祥二(カトリック潮見教会・司祭)、
佐々木幸孝(弁護士 亀戸法律事務所)
高橋哲郎(元中帰連事務局長)、
田中 宏(一橋大学名誉教授)、
段 躍中(日本僑報社編集長)
山内小夜子(真宗大谷派僧侶)、
凌 星光(社団法人日中科学技術文化センター理事長)
林 伯耀(旅日華僑中日交流促進会代表)(あいうえお順)
【90年+1周年事業】の概要
・犠牲者の追悼と虐殺事件の真相究明に取り組み歴史の継承をはかる
・2014年9月7日の「集い」にあわせご遺族を日本へ招請する
(7月7日現在、集いに参席するため遺族19名の来日が予定されています)
・遺族による受難現地ならびにゆかりある地の訪問
(9月5日から10日頃までの滞在中、東京近辺のゆかりの地を訪問する予定です)