昨夜、日本日中関係学会主催の勉強会で、いつも応援していただいているNPO中国留学生交流支援 立志会五十嵐貞一理事長と会いまして、五十嵐理事長が書かれた「中日 対話か? 対抗か?」に関する書評が立志会のホームページに掲載されていることを分かって、許可を得て転載させていただきました。
書評ありがとうございます。全文の出所http://www.risshi.org/33page14.html
中日 対話か?対抗か?
李東雷著
日本僑報社
1,500円+税 2014年9月
●書 評:五十嵐 貞一
本書について、評者が注目した点は、
①著者が、中国国防相の元中佐という経歴を持つこと
②極めて柔軟に、中国の現在の外交政策や中国世論の一般的動向と一致しない対日観を展開していること(著者は、例えば、中国国防相の日本公式訪問に随行した際の見聞や、エズラ・ヴォーゲル氏の中日関係についての講義などから、「中国人が、いかに日本を知らないか」を感じ取ったとしている。その柔軟な感性に敬服する)
③本書の内容は、中国国内のネット上で公開され、大きな議論を呼んでいるものであること
④ネット上での議論は、必ずしも、著者の主張に批判的なものばかりではなく、冷静に受け止める投稿も多く、中国世論が、反日一辺倒だとはいえないことが伺える由であること等である。
敏感な話題なので、評者の間接的コメントは控えて、できるだけ忠実に、著者の主張するところを、いくつか引用してみる。参考にして頂きたい。
1)歴史問題について:
「中日の歴史問題は古いテーマでありそれ自身がすでに一つの歴史問題になっている。歴史上、日本は何度も中国を侵略し、中国に悲惨な損失を与えた。これは誰もが認める歴史的事実である。(中略)日本はドイツのようには、侵略の歴史を徹底的に清算していない。私はこれも事実だと考える。第二次大戦後の世界と地域の安全環境の変化が、日本が侵略の歴史を徹底的に清算しなくて済む結果をもたらした。六十年後、高度に多様化した日本に再び歴史問題を徹底的に清算するよう要求することは、現実的ではない。」
2)領土問題について:
「私たちが今の智恵ではより良い解決方法を見つけられないのならば、鄧小平の智恵に戻るしかない。私は中日が争いを棚上げし、日に日に固定化する今の対抗思想を捨てなければならないと主張する。同時に両国政府と民間の対話と交流を強化し、中日両国の人々がさらに事実に基づいて歴史を理解し、現実を理解し、相手を理解し、更に自身を理解し、「求真務実」という基礎に立って未来に向き合うようにすべきだ。
3)現在の日本の軍国主義について:
「今の日本人はどんな様子か、中国人はあまり知らないだろう(頭から知りたくないと思っているかもしれない)。平和憲法で六十六年間洗脳された日本人、平和な環境の中で、私権、自由、民主(日本式民主)を十分享受してきた日本人、文人官僚の管理下にある日本人、戦後の各世代の考え方が戦争からどんどん遠ざかっている日本人、軍隊が国家化し、軍人は政治に参画しない日本。彼らがどうやって軍国主義に向かうのか教えてほしい。」