
特集ワイド:国内発行中国語紙にみる華人社会 冷える日中両国の間で 「アベノミクスで三重苦」/日本理解の窓口にも
毎日新聞 2014年10月29日 東京夕刊
日中首脳会談は実現するのか。関係が冷え込んだ日中両国のはざまで暮らす在日中国人たち。彼らにとって重要な情報源となっているのが、日本で発行されている中国語新聞だ。この国をどう見て、何を報じているのか。【庄司哲也】
東京都豊島区のJR池袋駅北口、西口周辺は、1980年代以降に来日した「新華僑」と呼ばれる中国出身者が経営する飲食店や書店などが集まり、新たなチャイナタウンを形成しているかのようだ。北口を一歩出た途端、すれ違った若者から中国語の会話が聞こえてきた。
(中略)
「日本での中国語紙の始まりは、88年に創刊された留学生向けの新聞です。当時は日本での生活ルール、例えば『ゴミの出し方』などを紹介していました」。そう解説するのは中国関連書籍の翻訳出版を手がける「日本僑報社」編集長の段躍中さんだ。89年の天安門事件直後には民主化を求める政論を掲載した新聞もあったが、次第に政治色は薄れて総合紙が主流となり、近年は娯楽色も強まっているという。「80年代から90年代初めごろの在日中国人社会は、留学生中心で非常にシンプルな構造でした。彼らの中には起業して成功を収めたり、大学で教壇に立ったりして日本で一定の社会的地位を得る人も多かった。しかしその後は、日本企業に就職して安定した生活を構築する人がいる一方、低賃金で働く技能実習生や不法滞在者も増えるなど多様化し、階層も生まれました。留学生新聞から総合・娯楽紙へと進んだ中国語紙は、中国人社会の変容を反映しています」
(中略)
日中の重要な接点、在日中国人社会を理解するために中国語紙を一度、めくってみてはいかがだろう。http://mainichi.jp/shimen/news/20141029dde012040004000c.html