日本語で読める唯一の中国誌『人民中国』2015年2月号に、日本僑報社の段躍中編集長が登場した。「『嫌中憎韓』に加担せず 出版界に自主的な動き」とのタイトルで、出版関係者の1人として出席した座談会のもようが報告されたもの。
近年、日本の街頭では韓国や中国に対する排外的なデモが行われ、書店には中国を非難し、韓国をののしる「嫌中憎韓」の書籍が氾濫している。しかし出版界の一部から反省の声が起こりはじめ、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」が結成された。こうした現象はまだ始まったばかりだが、結成の経緯やその意味などについて、出版界に詳しい関係者が語り合った。
その中で、同「出版関係者の会」の呼びかけ人である岩下結氏(大月書店編集部副部長)は会結成の経緯について「出版側が『ヘイトスピーチ』の加害者の側になっているのではないかという問題意識から出発しました」と紹介。
同会事務局メンバーの真鍋かおる氏(高文研編集者)は、ヘイトスピーチを批判することは言論・出版・表現の自由との関わりで「非常に難しい問題」だとしながらも、「排外主義的なタイトルが書店や電車の中吊り広告で人々の目にさらされることが、社会にどれだけの影響力を与えるかが心配」だと主張した。
また、段躍中編集長は、「『嫌中』の書籍はもちろん、日中関係の悪化につながるので心配です」「私は『出版が出版を制する』という考え(中略)。言論の自由があるからこそ、(嫌中本の)発行を禁止するのではなく、真正面からぶつからないといけません」と力強く訴えた。
「『嫌中憎韓』に加担しない」という出版界の新たな動きが、今後どのように発展し、社会に影響を与えていくか――。
座談会を振り返り、段躍中編集長は「このような動きを期待して見守るとともに、私は『出版が出版を制する』という考えで、良心的な読者に向けて地道な出版活動を続けていきたい」と語っている。
※ 座談会の詳しい報告は、『人民中国』2015年2月号の「『嫌中憎韓』に加担せず 出版界に自主的な動き」をご覧ください。