【日本僑報社発】日本僑報社・日中翻訳学院の第4回「翻訳新人賞」を受賞した藤村とも恵さん、中西真さんからこのほど、事務局あてに出版翻訳の体験文が寄せられた。
藤村さんは、中国近代文壇を代表する豊子愷(ほう・しがい)の児童文学全集第2巻『少年音楽物語』(小社刊)を翻訳した。藤村さんが書籍翻訳を担当するのは、今回初めて。
体験文によると、初めての書籍翻訳を無事終えたことに対し、日中翻訳学院の講師・武吉次朗先生をはじめとする関係者への感謝の意を表した上で、今回の翻訳の苦労について「言葉はもちろん、音楽関係の専門用語と各国の音楽家の名前、それに漢詩や歌詞など、わからないことが次から次へと出てきた。民国時代の内容のため、古い言い回しや言葉、詩の引用が多くて苦労した」と率直に振り返る。
そうした体験を経た上で、書籍翻訳で大切だと思った点は「事前によく調べること、独りよがりにならず他者に読んでもらうこと、えり好みせずいろいろな文章に接し文章を精読すること、さまざまな分野に興味を持つこと、絶えず母語を磨くこと、そしてそれらをコツコツと積み上げていく、まさに武吉先生が教えて下さっている通り」だと強調。
さらに「翻訳作業は私にとっては非常に厳しく大変でしたがチャレンジして本当に良かった」「自分をすべてさらけ出す翻訳のおそろしさもいやというほど味わったが、同時に翻訳のおもしろさと奥深さを身をもって体験することができ、今後の課題もはっきりするなど得たものは大きく、翻訳ってやっぱり楽しい、と実感した」と力説していた。
また中西真さんは、中国発展のメカニズムを紹介し、その国づくり90年を振り返る、程天権著『日本人には決して書けない中国発展のメカニズム』(小社刊)を翻訳した。これは中西さんの書籍翻訳の第一作となった。
体験文によると今回、原文が80ページ余りという自身にとって「生まれて初めての超大作」に取り組み、「訳語の統一」や「中国語に引きずられない」「日本語のボキャブラリーを増やす」などの点で苦労と工夫を重ねたという中西さん。
作業を進めるうちに「そもそも翻訳には限界があるのではないか?」「著者の言いたいことは分かるが、どうしても日本語に訳せない」といった翻訳の壁にもぶち当たったと振り返る。しかし「それでも翻訳しなければ中国人の思っていること、言いたいことが日本人に伝わらない」と思い直し、コツコツと翻訳に当たってきた。
そうした翻訳で悩んでいたころ、昨年夏の「武吉塾」公開セミナーに参加し、「先輩訳者の苦労談等を伺ううちに、みんな同じ悩みや恐怖と戦ってきたんだと、翻訳を続ける勇気をもらった」。
先輩や仲間たちの真摯な姿に後押しされて、無事1冊の本を訳し終えたと、中西さんは感謝の言葉を綴っていた。
【訳者紹介】藤村とも恵(ふじむら・ともえ)
長野県出身。深せん大学語学留学課程修了、現在広東省深せん市在住。日中翻訳学院武吉塾を第四期より継続受講中。
※ 豊子愷児童文学全集第2巻『少年音楽物語』
豊子愷・著、藤村とも恵・訳、林屋啓子・編集協力
http://duan.jp/item/193.html
家族を「ドレミ」に例えると? 音楽を愛する少年の話から始まる未来の音楽家のための短編集。世界で読まれている児童文学の名作。
【訳者紹介】中西真(なかにし・まこと)
1968年兵庫県に生まれる。1992年明治大学を卒業後、住宅機器メーカーに勤務。2013年退職し、2年間の準備期間を経て2015年から本格的に翻訳家としての活動を開始する。主な受賞歴はNHK WorldChineseパーソナリティー大会優勝(2014年)、日中友好協会中国語スピーチコンテスト東京大会弁論の部優勝(2014年)。2015年より日中翻訳学院「武吉塾」を受講中。
※ 『日本人には決して書けない中国発展のメカニズム』
程天権・著、中西真・訳
http://duan.jp/item/143.html
名実共に世界の大国となった中国。中国人民大学教授・程天権が中国発展のメカニズムを紹介。中国の国づくり90年を振り返る。