推薦文収録 ■本書は尖閣問題を冷静な話し合いで解決するためのヒントにあふれている 元外務省国際情報局長・孫崎享 ■尖閣認識の「落とし穴」を突く 共同通信客員論説委員・岡田充
【内容紹介】日本政府による「尖閣諸島の基本見解」とは、尖閣諸島は「日本固有の領土」であり、それは歴史的にも国際法上も疑いようがなく、「現にわが国はこれを有効に支配して」いる。そのため「尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在してい」ない(外務省ホームページ)とするものである。 これを見れば、日本政府が1895年に尖閣諸島を編入する閣議決定を行って以来、約120年間一貫してその主張に変わりはないと、ふつうの人は考えがちだ。だからこそ、中国や台湾の領有権の主張に対しては「石油が出そうになってからの後出しジャンケンだ」という見方が「定説」になっているのである。 しかし著者によると、国際法上の「先占」など、尖閣諸島の領有論拠と歴史的経緯に関する日本政府の「物語」が完成したのは1972年になってから。しかも、そこから約20年さかのぼる1950年代半ばには、政府当局者が「尖閣諸島」の島名すら認識していなかったことなどが、国会会議録の検証によって明らかにされている。 本書は、国会答弁の膨大な記録にあたり、それらを細かく検証することで、尖閣諸島をめぐる「疑問」や「誤解」を1つずつ解いていく。日本にとって不利となる事実であっても、国会会議録からすっかり消し去ることはできない。「まずは事実を認識し、それを踏まえて冷静に議論することで、日中信頼関係の再構築を」と著者は語る。
著者について、笘米地真理(とまべち・まさと)1971年、東京都生まれ。中国・中山大学中退。2014年、法政大学大学院公共政策研究科修士課程修了。青山学院大学法学部非常勤講師等を経て、現在、法政大学大学院公共政策研究科博士後期課程、同大学大学院政策科学研究所特任研究員、日本地方政治学会・日本地域政治学会理事等。論文に「「尖閣『固有の領土』論を超え、解決の道をさぐる」(『世界』2014年10月号)など。