【日本僑報社発】アジア解放という大志を抱き、中国の辛亥革命(1911年)を支えた日本の革命家、宮崎滔天(1871-1922年)の意志を汲む、民間の日中交流の集まり「滔天会」の文化講演会が8月20日午後、東京都内で開かれ、元中国大使で日本日中関係学会会長の宮本雄二氏が「これから日中双方がなすべきことは何か」をテーマに講演した。
宮本氏はまず、「中国の国父」といわれる孫文の革命闘争を、生涯にわたって支えた宮崎滔天の偉業について触れ、「滔天は熊本出身、私は福岡出身。滔天の(書いた)ものを読むにつれ、こういう人はなまじっかな人ではないと思った。思い定めると一心不乱にやり続け、家族は大変だったと思うが(そうした姿勢に)心を打たれた」と自身の深い印象を交えて紹介。
その上で、現在の日中関係が、滔天と孫文の親交から学ぶべきこととしては「やはり人間同士の関係(が重要)だ。国と国の関係、個人と個人の関係は両立する。それを多くの先人は示している。国の関係が悪くなってもあきらめる必要はない。むしろ個人の関係を強めるべきだ」と強調した。
世界第2位の経済大国として国際的にも影響力を増している中国と、日本が今後どう関係を構築していくかについては「日本は、日本の強みを残しながらどう中国との関係を構築するかを考えないといけない」との考えを明らかにした。
その中で問題点としては、日本側は歴史認識問題を挙げ「加害者は早く忘れたいが、被害者は忘れられない。この認識を持っていないとうまくできない。(日本では)きちんとした歴史教育をしていくことが不可欠だ」とした。
また中国側は、先ごろ国連の裁判所が中国の主張する南シナ海の領有権を「無効」とする判断を下したことに対し、批判的な姿勢を強めているが「法治国家はルールに基づいて統治をしないとうまくいかない。国際法はそのルールだ」として、国際法的な判断を理解する必要があると呼びかけた。
さらにこれからの日中関係の課題としては、欧米文明を中心として形成されている戦後の国際秩序に「アジアが参画しなければならない」と強調。
「アジアの文化、文明の力を(国際秩序に)入れていき、それで世界が良いものになればアジアは欧米と肩を並べることができる。経済や軍事力では肩を並べたことにはならない。日中で争っている暇はない」として、日本も中国もソフトパワーを強化し「今の世の中(世界)に、何をアジアの価値観として打ち出していったらよいのかを提起する」ことが重要だと訴えた。
会場には、滔天会の会員をはじめ「朝日新聞」「読売新聞」など各紙に掲載された開催案内を見て参加した人たち約100人が出席。宮本元大使の広い視野と貴重な経験に裏打ちされた講演に、熱心に耳を傾ける姿が見られた。
講演会の司会進行は、日本僑報社の段躍中編集長が務めた。※写真は段躍中撮影