山口 守(日本大学教授)先生の「2016年回顧 中国 何が翻訳されるかよりそれをどう読むか論じた方が有意義」です。ありがとうございます。http://dokushojin.com/article.html?i=633
今年は魯迅逝去八〇周年にあたり、中国国内で記念行事が行われたが、一方で中華民国期文学が次第に遠ざかっていく感もある。だが時の経過と共に文学の蓄積が増えることはむしろよいことだろう。文学は作家によって書かれた瞬間に過去に属するが、読者が読むことで誕生する、現在・未来に属する芸術でもあるからだ。折よく今年は『日中の120年文芸・評論作品選』(全5巻、岩波書店)、『中国現代散文傑作選1920↓1940』(勉誠出版)が刊行され、文学史的な俯瞰が容易になった。個別作家でも巴金『寒い夜』(再版、立間祥介訳、岩波文庫)、『豊子愷児童文学全集』(全七巻、日本僑報社)があり、更に中国近代思想理解に欠かせない陳独秀の著作集『陳独秀文集』(全三巻、平凡社)の刊行が始まるなど、民国期の優れた作品・文章を日本語で読む機会が増した。また魯迅、巴金等の研究書も出版されている。