
今週の本棚・新刊『二階俊博-全身政治家』=石川好・著。毎日新聞7日付けの紙面より転載
現役の政治家の歴史的評価は、後世の史家に委ねられる。その上、政界での二階評は毀誉褒貶(きよほうへん)が相半ばしている。それだけに、二階の故郷、和歌山の風土や地縁、血縁をキーワードに、ユニークな構成で、二階像の再現に努めた。執筆の動機も「中国での評価が高いこと」「(日本での)二階に対する評価のギャップの解明」と、ユニークだ。
同郷の先人で、明治期の外相として、当時最大の政治的懸案事項、不平等条約の改定に尽力した陸奥宗光らに繋(つな)がる二階との「奇縁」から、「内政はおろか外交分野までの全方位的な政治家(誕生)の謎が幾分なりとも解明できる」と、構成の意図を説明している。
作家であり、国政選挙にも挑戦した経験を持つ著者の特性を生かした興味ある秘話も記されている。例えば、民主党政権時2012年、尖閣諸島での中国船の日本公船への体当たり事件の収拾のため、訪中を政府サイドから打診された二階は、「国家的一大事だ。そういう時には与党も野党もない」と応諾していたという。程なく「与野党合作訪中」は沙汰やみとなったが、日中に懸ける二階の気概が彷彿(ほうふつ)される。(喬) 毎日新聞2018年1月7日 東京朝刊