【書評】『美しい中国語の手紙の書き方・訳し方』
【日本僑報社発】日本僑報社の新刊『日中中日翻訳必携 実戦編3 美しい中国語の手紙の書き方・訳し方』(千葉明著)についてこのほど、日本国際貿易促進協会の泉川友樹氏より丁寧な書評が届いた。
同協会で経済交流促進事業に従事し、会談通訳なども務める泉川氏は、本書について「より高いレベルの中国語運用力を目指す学習者にとって、自身を啓発するための必読の書」などと高く評価している。
書評全文は以下の通り。
◆『日中中日翻訳必携 実戦編3 美しい中国語の手紙の書き方・訳し方』
千葉明著、日本僑報社刊
http://duan.jp/item/249.html
【泉川友樹氏・評】
日本では高校や大学で、あるいは社会人になって初めて中国語に触れ、学び始める人が圧倒的に多いのではないだろうか。かくいう評者も大学時代に第2外国語として中国語と出合い、今日まで学習を続けてきた。もう19年になる。
現代中国語は話し言葉を書面で使用しても十分通用するため、口語表現の能力をある程度身につければ中国人との会話や日常生活に不自由することはほぼなくなる。誤解を恐れずにいえば、そこを一つの「ゴール」とみなすことだってできる。
しかし、本書を一読すれば、悠久の歴史に育まれた中国語の奥深さや美しさは口語表現のみで味わい尽くすことはできないことが理解できる。本書に登場する日常生活ではなかなか目や耳にすることのない美文の数々。実例として収録されている毛沢東、周恩来、魯迅等の手紙文の美しさ。「文如其人」の言葉通り、性格や人柄まであますところなく反映している文面を目にし、美文の持つ圧倒的な力に衝撃を受けた。眼前に突如として広大な世界が現れ「中国語をマスターする」というゴールは遥か彼方に遠ざかってしまった思いがする。より高いレベルの中国語運用力を目指す学習者にとって、本書は自身を啓発するための必読の書といっていい。
本書は、中国語の手紙文における古式ゆかしい格式である「尺牘」の構造を分析して細かく分類(邀覧、啓示、時令、叙別、恭維、本文、珍重、請安、敬辞)、各パートの頻出表現を紹介している。これにより、読者、即ち学習者が各パートの頻出表現を組み合わせることで美しく優雅な中国語の手紙文を書くことができるように工夫が施されている。課題や模範解答も収録されており、中国語学習者に対する筆者の細かい配慮が光る。それは外務省勤務で中国語翻訳に苦労したという筆者自身の経験と無縁ではあるまい。評者は筆者と面識はないが、本書自身が筆者の人柄を如実に表していると感じた。
「中国語をマスターする」道のりは果てしなく長く、ゴールは遠い。しかし、それは学習の過程で様々な人や書と出合い、人生が豊かになっていく楽しい道のりでもある。本書を携え長い旅路を楽しむ友とし、また師としたい。中国人に手紙文を褒められる日をイメージしながら。(了)