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日本僑報電子週刊 第594号 2006年10月25日(水)発行
http://duan.jp 編集発行:段躍中(duan@duan.jp)
■段躍中日報 http://duan.exblog.jp/■
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★袁偉時教授の著書『中国の歴史教科書問題』刊行特集★
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読者の皆様
晩上好。
あっというまに一週間が過ぎました。昨日の東京は、随分寒かったと思
います。皆さんのところは如何ですか。
今週のブログにも多くの情報を掲載しました。特別推薦したいのは、只
今編集したばかりの笹川日中友好基金主催の日中国防関係者交流懇親会
東京で開催されたニュースです。私は初めて招待されて、日中の制服組
との交流は、大変新鮮な感じをしました。公式の場で日中現役軍人の話
を聞くこと自身、とても勉強になり、多くのことに感心しました。特に
今夜の懇親会をブログに取り上げてもよろしいかについて主催者に聞い
たところ、「もちろんいいですよ、この事業はいつも透明性を求めてい
ますから」という返事をいただき、大変痛快でした。沢山の写真を撮り
ましたが、容量の制限で三枚だけ掲載しました。この場を借りて招待し
てくださった関係者の皆さんに深くお礼を申し上げます。
中国語作文コンクールの応募者は随分多くなりまして、本日現在100
本を突破して、103本になりました。応募者の皆さんを初め、応援し
てくださった皆さんに心から御礼を申し上げます。今回特に嬉しい、有
り難いことは、日本の24の都道府県からの応募者だけではなく、中国
の8の地域(香港も含む)、アメリカ、韓国在住の日本人の方も応募し
てくださいました。これはインターネットのお陰です、本当にありがと
うございます。詳細は以下の頁をご覧下さい。これからの一週間、一層
収穫できることを心から期待しています。http://duan.jp/cn/2006.htm
後楽寮生調査事業について報告致します。お陰様で中国国内在住の寮生
OBがホームページに掲載された案内の通り、各地から電子データを送
って頂いております。改めて皆さんのご協力に感謝致します。事業委託
者である村上日中友好会館理事長から新しい挨拶文と素晴らしい写真を
頂きましたhttp://duan.jp/ob/index.htm、ありがとうございます。
多くの方々のご協力を心から期待しています。既にデータを寄せてくだ
さった方々に一つお願いがあります、知っている同期の寮生を一人でも
紹介してください、あるいは下記のアドレスを転送してください、締切
は12月18日です、よろしくお願い申し上げます。
http://duan.jp/ob/index.htm
時間の関係で今週のメールマガジンは袁偉時教授の日中対訳版著書『中
国の歴史教科書問題』http://duan.jp/item/043.htmlを特集で送り致し
ます。ほかの情報は私のブログをご覧下さい。
では、また来週。
段躍中@2006.10.25深夜11時24分
■目次■
内容紹介http://duan.jp/item/043.html
まえがき(節選)
本書の目次
訳者あとがき
著者略歴と著者のモットー
訳者略歴
書誌データと注文先http://duan.jp/item/043.html
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内容紹介
本書は『氷点週刊』停刊の契機になった論文『近代化と中国の歴史教科
書問題』の執筆者である袁偉時・中山大学教授の関連論文集である。
冒頭の「『氷点』事件の記録と反省」は、袁教授が本書のため書き下ろ
した労作であり、一読に値する。
事件発生後、同僚と旧友たちだけでなく、未知の人々――多くは一介の
市民――も含めた支援の輪の広がりが生き生きと描かれているし、かつ
ての受難の時代をともに耐えてきた肉親の情愛は切々と胸を打つ。
他の論文で、義和団と文化大革命期の紅衛兵の愚行が通底しているとの
喝破、日中両国でほぼ同時期に起きた明治維新と洋務運動が異なる結果
を生んだ原因の解明、昨年の「反日デモ」で噴き出した偏狭なナショナ
リズムの危険性の指摘など、われわれにも関心の深い問題点を、歴史家
の視点で縦横に論じていることも注目される。
――本書「訳者あとがき」より
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まえがき(節選)
一、李大同との出会い、「近代化と中国の歴史教科書問題」の発表
二、思いがけぬ嵐に遭遇
三、台風の中心の静けさ
四、文明と無知の衝突
五、外国記者と大使たちの関心
六、キャンパス内外の動き
七、一番つらかった肉親の情愛(下の分はこの部分から一部を掲載)
マルクスの名言曰く、人間は社会関係の総和である。まことにもっと
もで、一人を無辜に傷つけると、大勢に影響が及ぶ。
私にとって、事件発生後の難題の一つは、どうやって妻の志明に隠し
つづけるかだった。分にやすんじる彼女の静かな生活をかき乱さない
こと。パソコンに疎く、耳も遠い妻は、毎日家で新聞、テレビ、家事
に没頭し、ほとんど外出しない。だから一カ月あまりは、外で風雨が
強まっても何も知らぬままだった。二月下旬のある日、妻が突然言う
には、徐雪賓から電話があり、貴方が『中国青年報・氷点』に書いた
論文が大問題になっていると様子を教えてくれ、最悪の心構えをする
よう言われた、と。
いわゆる外国反動勢力の支持とやらの具体的中身は、下心ある者の捏
造なのだが、誰がデマを雪賓に吹き込んだのだろう。
(1)「海外の金銭的援助」。研究と学術活動に海外の金銭的援助を
受けることは、政治的な問題とは異なる。私は二十年前に米国のワン
グ研究院漢学研究奨励金を受けたが、これは国務院の科学教育組(現
在の教育省)が、当時米国でコンピューターの大手だった王安氏の研
究院と協力し、全国の重点大学の教員が申請し、公平な競争をへて獲
得したものだった。また十年前には香港の霍英東基金会からの資金提
供を受け、学術活動を組織し、海天出版社と広東人民出版社から『現
代と伝統社会』シリーズを刊行したが、その中に朴途の『一を分けて
三となす』などハイレベルの学術著作も含まれていた。同時に李沢厚、
劉小楓ら著名な学者を中山大学に招き講演してもらった。ただし十年
前のこの事業は終わっているうえ、すべての支出を同基金会に証憑を
付けて報告しなければならず、私は活動の組織者に過ぎなかった。資
金問題にかこつけて「反動勢力の代理人」を造りだすのが好きな連中
がいることをつとに聞き及んでいたので、私はとりわけ慎重に対処し、
完璧にやりとげた。これも、嵐の中で平然としておられた一因であっ
た。
(2)私の「本は国内では買えず、みな海外で出版されている」。実
際には昨年六月まで、私の本はすべて国内で出版しており、海外で刊
行したことは一度もなかった。昨年七月に香港の明報出版社が拙著『
清朝後期の大変動』の繁体字版を出したのが最初だったが、同書は一
九九二年に深框で初版を出し、一九九五年に再版され、二〇〇三年に
は江西省で増訂新版が出ている。このほかこの問題に関連して、忘れ
てはならない簡単な常識がある。言論の自由と不可分の出版の自由は、
現代公民の当然の権利である。ある国の公民が自国で自由に著作を出
版できず、やむなく海外で機会を求めた場合、非難されるべきは作者
ではなく横暴な権力なのである。
(3)「台湾の敵対勢力による大陸攻撃に論点を提供」。『氷点』事
件が起きたとき、国共両党は蜜月期にあり、「敵対勢力」とはいえな
い。民進党は自分のことで精一杯で、本件に介入していない。台湾と
世界のメディアが巻き込まれたのは検閲班の功績とすべきで、彼らが
今回の騒動を造りだして、メディアに豊かなニュースソースを提供し
たのだ。義和団に関する私の観点は海外の学術界で多くの人とのコン
センサスになっており、大陸の学者がわざわざ知らせる必要もない。
コーエンの手紙がその証左である。
中国で、自分の思想や学術的見解を堅持する人を陥れ、政治的に問題
があるとか、反動勢力が裏で操っているといい、「階級闘争の新たな
動き」を造りだすことは、二〇世紀の二〇年代以降、珍しいことでは
なく、多くの被害者が一家離散の憂き目にあった。改革開放以来、こ
のように卑劣な仕打ちは絶無ではないが、同じことをくり返そうとい
う人は減ってしまった。今度の事件でこの手を使う者がいたとは意外
だったが、デマが飛んできたかと思えば消え去り、誰も関心をもたな
かったのは、この手の市場が非常に小さくなり、まじめに受け取る人
がいないことを物語っている。
徐雪賓教授は志明の広州協和女子中学のクラスメートで、長年来の親
友である。夫は盧永根院士〔アカデミー会員〕で、われわれ夫婦は半
世紀来の友人である。たくさんの嵐を体験したこと、私に何も疚しい
ところがなく、正当でない資金など受け取っていないと信じているこ
とからだろう、志明は心配しながらも平静を保っていた。彼女の意見
は、批判したければするが良い、子どもたちまで巻き込まないよう、
敵対せず、反駁もしない。彼女の一貫した態度は「組織(共産党と政
府)」を信じることで、「組織」が間違ったら意見は出すが、聞いて
もらえないなら耐え忍ぶ。私は、自分は間違ったことをしておらず、
海外の反動勢力との結託などなおさらしていない、自分の学術観点は
正しく、国のさらなる発展のためなのだ、心配することは何もない、
と話した。
以下略。
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本書の目次
はしがき――『氷点』事件の記録と反省
近代化と中国の歴史教科書問題
中国歴史教科書騒動
冷ややかに見つめつつも……
――『氷点』復刊に思う
学術・文化の討論が理性・寛容・自由・
平等の下に回帰するよう願って
なぜ、何時、どのような「反帝・反封建」
だったのか――「反帝・反封建が近代中
国史のテーマ」に答える
甲午戦争〔日清戦争〕の歴史的教訓
抗日戦争 文明の進展と中国の反省
近代中日関係への冷静な思考
訳者後書き
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訳者あとがき
「中国青年報『氷点』週刊特集」が二○○六年一月、当局により停刊処
分を受けたことは、わが国でも多くのメディアが取り上げ追跡取材した
ので、ご承知のことと思う。
本書はその契機になった論文『近代化と中国の歴史教科書問題』の執筆
者である袁偉時・中山大学教授の関連論文集である。収録された九編に
は、権力におもねることなく節操を堅持する学者の姿勢が貫かれており、
読み進むうち、畏敬の念を覚えずにはいられない。
特に冒頭の「『氷点』事件の記録と反省」は、袁教授が本書のため書き
下ろした労作であり、一読に値する。事件発生後、同僚と旧友たちだけ
でなく、未知の人々――多くは一介の市民――も含めた支援の輪の広が
りが生き生きと描かれているし、かつての受難の時代をともに耐えてき
た肉親の情愛は切々と胸を打つ。
他の論文で、義和団と文化大革命期の紅衛兵の愚行が通底しているとの
喝破、日中両国でほぼ同時期に起きた明治維新と洋務運動が異なる結果
を生んだ原因の解明、昨年の「反日デモ」で噴き出した偏狭なナショナ
リズムの危険性の指摘など、われわれにも関心の深い問題点を、歴史家
の視点で縦横に論じていることも注目される。それはまた「文明史」と
いう視点をわれわれに提供してくれてもいる。
『氷点』事件の経緯を読まれて、読者はどのような感想を抱かれただろ
うか。「中国はやはり自由も民主もない国だ」と言う方もおられるだろ
う。しかし、二十余年前までと比べるなら、袁教授も述べているように、
中国の民主化と法治化は曲折をへながらも前進しており、かつての文化
大革命期のような知識人迫害の時代は過ぎ去った、というのが訳者の率
直な感想である。本書がこうして日本で刊行されること自体、その証左
でもある。ともあれ、引き続き注目していきたい。
本書の論文のうち、五編は横堀幸絵さんの訳によるものであることを付
記して、謝意に代える。
武 吉 次 朗
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著者略歴と著者のモットー
袁 偉時(えん いじ) 1932年生まれ。、広東省興寧県出身。中山大
学哲学学部教授。主な著書:『中国現代哲学史稿』『晩清大変局中的思
潮与人物』『路標与霊魂的拷問』『告別中世紀――五四文献選粋与解読』
『近代中国論衡』など。
著者のモットー
毎日 一万メートル歩き 八時間働く
真実を語り 自分の言葉で話す
毎日 笑って過ごす
自分の失敗も成功も一笑に付し
天下のおかしな人を笑い飛ばし
希望と暗黒が共存する
多彩な時代に生きる喜びにひたる
これが 心身ともに健康で
楽しく暮らせる秘訣である
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訳者略歴
武吉 次朗(たけよし じろう) 1932年生まれ。1958年、中国から帰
国。日本国際貿易促進協会事務局勤務。1980年、同協会常務理事。1990
年、摂南大学国際言語文化学部教授。2003年退職。主な著書:『現代中
国30章』(共著、大修館書店、2004)など。主な訳書:『大破産 中国
の国有企業改革』(東方書店)、『新中国に貢献した日本人たち』(日
本僑報社、2003、http://duan.jp/item/57.html)、『続 新中国に貢
献した日本人たち』(日本僑報社、2005、http://duan.jp/item/021.html)
など。
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◆書誌データと注文先◆
書名 中国の歴史教科書問題―『氷点』事件の記録と反省(日中対訳版)
http://duan.jp/item/043.html
著者 袁偉時
訳者 武吉次朗
発行 日本僑報社
判型 A5判320頁 並製
定価 2600円+税
発売 2006.10.28
注文 171-0021東京都豊島区西池袋3-17-15日本僑報社
TEL 03-5956-2808 FAX 03-5956-2809
インターネット注文先 http://duan.jp/item/043.html
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