日中韓女性経済会議2006に参加して
早稲田大学 木下俊彦
日中韓女性経済会議実行委員会(委員長:元外務大臣・環境大臣 参議院議員 川口順子氏)主催の表記会議(第2回)が、2日、経団連で開かれ、王効賢中日友好協会副会長、申受娟前韓国対外経済通商大使(Blue Star Energy会長)など100数十名が参集した。
川口委員長の開会挨拶、各国代表の祝辞のあと、名取はにわ氏(財団法人 こども未来財団審議役、早大客員教授)による基調講演「日本の男女共同参画施策について」があった。
その後、第1セッション(演題:「日中韓の経済交流の可能性」)が行なわれ、私はモデレーター(兼スピーカー)を務めた。中国からのスピーカーは、著名な女性ジャーナリスト・中国経営報」総編集長の李佩鈺(リー・ペイユー)氏、韓国からは婦人問題でも著名なInstitute of Global Management会長・国際弁護士のチョン・ソンチョル氏。
まず、李佩鈺氏が、中国の過去20年の「奇跡的」経済発展の成功ぶりを強調、東部・西部間の所得・開発格差の拡大については短期的解決は困難だが、長期的には、克服できるだろう、と述べた(とくに根拠は示さず)。チョン氏は、欧州の地域連合体・EUの成功を挙げ、EUは米国のGDP規模を上回る経済統合、さらに、通貨統合を達成した。米国はこれに対抗すべくNAFTAをつくった。日中韓がモデルにすべきはEUであり、自分はそれを体化した「北東アジア経済ブロック」の形成を主唱したい。その統合理念はグローバル・スタンダードに合致したものでなければならない、と述べた。
私は、日本はこれまで地域経済統合にどう立ち向かってきたか、何がその障碍になってきたか、今後、それはどうなって行きそうか、日中韓は何を目標に進むべきか、について、私見を述べた(添付PPT参照) 。
3人の講演のあと、会場から二つの質問があった。第1の質問は、チョン氏のいう「ブロック」という言葉は他の世界にたいして閉鎖的な存在に聞こえるが、どう考えているのか、北東アジアの統合を進めよというが、例えば、日韓EPA(FTA)の交渉は04年から中断しているが、その打開はいかになすべきか、というもの。これに対して、チョン氏は、自分の原稿では、ブロックでなく地域経済統合であったが、分かりやすいと思ってブロックという言葉を使った、対外的に閉鎖的なものをつくるべきと考えているわけではない。それは、世界各国が世界自由貿易体制へ向かっていく過程の一里塚と見なしている、また、後者については、EUを長年かかって作りあげてきたイメージをもっており、一歩一歩信頼を積み上げていくしかない、と述べた。
次の質問は、現在、中国において勤労女性の家庭回帰(専業主婦化)現象が見られるが、李氏はどう見ているかというもの。これに対して、李氏より、確かにそういう傾向は見られる。それは、第1に、一人っ子政策対応で、幼児から母親が子供の教育にかかわりたいという願望からでてきたもの、第2は、高学歴女性の就職がなかなか見つからないために起こる現象、第3に、ビジネスでの競争激化などがある。しかし、最近になって、再度、そういう女性が社会進出するという逆流現象も一部に見られる。それは、男性だけの所得では、生きていくのが難しいなどの理由などのためである、との回答があった。
PS 第1セッションの後、「情報通信におけるイノベーションと日中韓の連携」(モデレーター:杉田定大内閣府参事官、パネリスト:NTT東日本・岡田昭彦取締役、フラクタリスト・田中祐介社長、(韓国)Korean Venture Business Women’s Association宋恵子会長)「日中韓 文化交流の連携」(モデレーター:時事通信社・泉宏取締役、パネリスト:多摩美術大学・鶴岡真弓教授、(韓国)韓国伝統文化学校・崔善鎬教授)、「各国社会の新展開に向けて~女性企業人&企業家が果たす役割」(モデレーター:名取はにわ氏、パネリスト:資生堂・岩田喜美枝執行役員、(韓国)申受娟氏(大使)、(中国)首都女性ジャーナリスト協会・熊蕾副会長)という3つのセッションが開催された。