最新刊の『
梁祝口承伝説』(周静書編、渡辺明次訳)は、29日午前納品されました。明日のシンポジウムと記者会見に配布できるようになりました。この場を借りて関係者の皆さんに深くお礼を申し上げます。詳細は訳者の前書きをご覧下さい。

訳者前書き
「梁祝三部作」が完結した。梁祝愛情伝説を日本語で日本に正しく根付かせようという自分的には壮大な目標は達成された。ゼロから中国語を学習してたった四年という浅学をも顧みず、無謀とも言う試みであり、多くの人の助言と支持、応援に支えられた日々であった。特に共に中国語を学習し北京外国語大学の学生寮以来、なにくれとなく「梁祝三部作」と、常に励まし自信を与えてくれた飯島さん、出版社の段躍中さんに感謝申し上げます。
北京外大の寄宿舎の机上にずっとはりだし語学学習の友としてきた、古ぼけた紙を日本に持ち帰った。それは中国語の成語「熟能生巧」、「勤能補拙」「千里之行始于足下」「一回生、二回熟」である。これを再び机上に掲げ格闘した日々と言っても過言ではない。特にこの第三弾「梁祝口承伝説集」は中国全土各地に及ぶ沢山の知識や中国語の素地を必要とするものがあり、一度は翻訳中に「梁祝」が雲南省の歌垣の場面に登場したりで壁に突き当たる思いがしたが、幸いにも偶然に「雲南省の少数民族」や「歌垣」と「日本の古代文学」の研究をしておられ日本語に精通している、寧波大学の張正軍先生と知り合うことができ、又先生自身「四大民間愛情故事」(牛郎織女、白蛇伝、孟姜女、梁祝)に昔から興味を持っていたので翻訳監修を是非やらせて欲しいとの申し出を受け、問題は解決し意欲を持って翻訳に取り組むことができた。
また、卒業生の伊藤花織さんの紹介でたまたま知り合うことになったKOJOPOMさんの独特の雰囲気を醸し出す挿絵を描いてもらうことができた。彼女には本人の持つ瑞々しく若い感性に注目し、予備知識を与えず、監修前の自分の一回目の翻訳原稿を読んで貰いイメージをふくらませ描いてもらったところ自分的には予想を上回る素晴らしい挿絵を手に入れた。さらには表紙にも取り組んでみたいとの申し出を受け、これも全面的に彼女に任せた。
翻訳していてもこの第三弾の伝説集が内容的にも広がりが奥深く一番興味が持てた。願わくはこの第三弾口承伝説集を手に取り興味を持ち、伝説のベースを研究していることになる、第一弾「
梁山伯祝英台伝説の真実性を追う」に読み進み、さらにまた中国で一般的な梁祝の正調愛情伝説である、第二弾「
小説、梁山伯祝英台」を読む人が増え、日本の誰もが正しく水滸伝の「梁山泊(りょうざんぱく)」とこの愛情伝説「梁山伯(りゃんしゃんぼ)」を区別して知るようになり、若者のあいだでも「梁祝愛情伝説」、リャンシャンボとチュウインタイが知られるようになることを願っています。この翻訳原本は中国の二〇〇一年中華書局による「
梁祝的伝説」責任編集「周静書」による。原題には「口承」という言葉はないが、約五八篇に及ぶそれぞれは現地の古老などが語るのを聞き取り整理したものであるので日本語訳題名では「口承」を入れた。
二〇〇六年十一月八日 渡 辺 明 次