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日本僑報電子週刊 第629号 2007年4月4日(水)発行
http://duan.jp 編集発行:段躍中(duan@duan.jp)
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●小熊旭著『
現代中国文化考-江沢民から胡錦涛へ』刊行特集●
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編者より
日本僑報社から、小熊旭による『現代中国文化考-江沢民から胡錦涛へ』がこのたび刊行されます。
筆者は、在中国日本国大使館における文化担当官(1984年~1988年)、国際交流基金北京事務所(1992年~1998年)として中国における日中文化交流の現場で9年を過ごした人物であります。このような尊敬に値する経歴を持つ筆者ですが、それでも「中国人の心に触れようとしても触れ得ないもどかしさ」が残り続けたと本文の中で吐露します。そこで、異文化交流の基点に立ち返り、日中両国は異なる文化を持っているという原点の元、「中国人にとっての文化とは何なのか」というテーマで書き上げたのが本書です。
注目すべきなのは、筆者が中国共産党第16回全国代表大会において江沢民前国家主席によって提唱された「先進文化」論から、議論をスタートさせることである。これまで経済や政治の分野に比べ、「三つの代表」理論の一つとして提唱された「先進文化」論は大きく着目されてきませんでした。
そこで筆者は、まず現代中国における「文化」を取り上げ、「文化」というものを異文化交流の観点から中国人はどう捉えているのかについて、日本との比較を行いながら分析を行います。筆者自身の「文化」に対する考え方を明確にした上で、「先進文化」が何を意味し、江沢民前国家主席が、何ゆえに「先進文化」論を提唱したのかを、その背景、目的などに言及しながら論じています。
加えて、筆者は従事する日中文化交流の立場から、「先進文化」論が諸外国との対外文化交流とどのように関わり、実践されているのかを論じることで、それが江沢民時代から現在の胡錦濤国家主席の時代にどのような形で引き継がれ、発展を遂げるのか見据えます。そして、21世紀における新たな日中関係の構築、とりわけ文化力(ソフトパワー)による平和的共生への実現のために、中国の指導者をはじめとする中国人の文化に対する考え方を知ることによって、日中相互理解を双方向でさらに深化させていく契機となるよう提言を行うのです。
中国においても、日本においても「文化」は「文化」、同じ漢字を用います。その字面に囚われることなく、日中交流のために、両国における「文化」をもう一度考察するためにも、お読み頂きたい1冊です。
第二部では、様相ががらりとかわります。これこそが本書をお勧めしたい点の1つです。
杭州生活顛末記として、実際に筆者が直面した現在の中国の「文化」が生き生きとした筆致で描かれます。浙江工商大学日本語言文化学院客員教授として教鞭を執りながら出くわした中国の大学生、学生たちのコスプレ大会での驚き、春節の前には花火を売る店に変貌したいきつけの大衆食堂から見る現代の浙江商人の様子など、筆者が「もどかしさ」をさらけ出し、解決しようとしていく過程を読んでみるのが面白いのです。
第一部を読んで、第二部で筆者が見た現代中国の「文化」を読むもよし、第二部を読んで、第一部の論文を元に考察するもよし、それを繰り返すもよし。1冊で少なくとも2回は学べる書です。
ぜひ、ご一読賜りますようお願い申し上げます。
段躍中@2007.4.4
◆特集目次◆
【内容紹介】
「中国人にとっての文化とは何か」を探求した試論
【おわりに】
これからが本当の中国理解、日中交流の始まり
【目 次】
現代中国における文化及び対外文化交流に関する一考察/杭州生活顛末記・・・
【著者紹介】
1947年生まれ、浙江工商大学客員教授(2006年)・・・
【書誌データと注文先】
http://duan.jp/item/057.html