日中相互理解のために、作文コンクールにかける思い
「「作文」は文章を通じて人をつなぐもの」
段躍中(日中交流研究所所長・日本僑報社編集長)
書いてみて、はじめて伝わることもある。日中の「スピーチ」ではなく、「作文」のコンクールを主催している者の述懐である。日中友好、そして日本と外国における今後の交流のために、作文コンクールから見えてきたものを述べてみたい。
日中交流研究所では、今年で3回目になる「日本人の中国語作文コンクール」及び「中国人の日本語作文コンクール」を行っている。2005年に大森和夫・弘子夫妻(日本国際交流研究所)が12年間にわたって継続してきた「中国の大学生、院生・日本語作文コンクール」を、日中交流研究所が設立記念企画として引き継ぎ、現在に至る。
日中交流研究所は、戦後60周年の年に負の遺産を乗り越え、新たな日中関係を構築すべく、日中間の交流促進を促進する民間団体として誕生した団体である。そして、机上ではなく、実際に即した日中交流を進めるために、作文という手法を選んだ。話された言葉は、泡沫のように消えていってしまう。もちろん、それが悪いというのではなく、互いの意思疎通や交流に必要なことである。
しかし、文字にし、「作文」を考えるという作業は、更に交流を深める1つの手段ではないかと考える。
第一に、作文を考えるのには、時間がかかると言うことである。テーマ(中国語作文コンクールでは、「中国語と私」「日中相互理解を深めるには、どうしたらいいか」というテーマで募集した)に沿って、ああでもないこうでもないと一単語一単語考える。そのことが、思考を深めていく。
第二に、これが相手国の言葉で書く作文コンクールであるという特徴がある。日中両国民の間の誤解を少なくし、信頼関係を築いていくためには、互いに相手国を理解し、相手国の言葉で語りかけていくことが重要だと考える。そのために、日本人による中国語コンクールだけではなく、中国人による日本語だけでもなく、両国民における
第三に、書かれたものは何度でも読み返せ、互いに見せ合うことができる。コンクール参加者同士で意見が交換できるだけではなく、受賞作を読むことによって更なる問題提起にも繋がっていく。
こうして時間をかけて書かれた作文には、文章に真摯な気持ちが溢れ出ている。母語でない言葉での作文であるため、拙い文章や言い間違いなどは当然ある。しかし、それらは些細な問題であり、日中関係が冷え込む昨今において、日中友好について考える多くの応募者の胸には、作文コンクールを通して友好の灯が灯っているのである。あるコンクール審査員の言葉を借りると、「一枚一枚の原稿用紙から明るい将来の光が放たれている」のである。
冷え込むことは簡単であるが、日中国交は一日にして成らない。この拙稿をご覧になった読者にお願いしたい。もちろん、弱小の研究所であるため、ご応募もご支援も心よりお願いしたい。ただ、それだけではなく、この拙稿が読者にとって外国を理解し交流するために、思いをその国の言葉で「書いて」みる契機になれば幸いである。
★コンクール専用URL
日本人の中国語作文コンクール http://duan.jp/cn/index.htm
中国人の日本語作文コンクール http://duan.jp/jp/index.htm
★第一回「日本人の中国語作文コンクール」受賞作品集
『我們永遠是朋友』(私たちは永遠の友人)http://duan.jp/item/029.html
★第二回「日本人の中国語作文コンクール」受賞作品集
『女児陪我去留学』(娘を連れての留学)http://duan.jp/item/048.html
★第一回「中国人の日本語作文コンクール」受賞作品集
『日中友好への提言2005 』http://duan.jp/item/023.html
★第二回「中国人の日本語作文コンクール」受賞作品集
『壁を取り除きたい 』http://duan.jp/item/047.html