至文堂が出版している「国文学 解釈と鑑賞」6月号に、日本僑報社から『
近代の闇を拓いた日中文学―有島武郎と魯迅を視座として―』(華人学術賞受賞作品)を刊行したことのある康鴻音博士の論文「有島武郎と魯迅」が掲載されました。おめでとうございます。
康鴻音博士の著書紹介魯迅と有島武郎は外国留学を経験した人である。特に魯迅の作品は一九五六年に日本の中学校の国語教科書に採用されて以来、現在に至っている。他に香港・台湾・シンガポール・韓国など東アジアの人々によって魯迅の作品がさまざまな角度から読み継がれてきた。
一方、有島武郎の作品は魯迅が自ら翻訳し、出版して以来一九七〇年代以後長編小説も翻訳されて中国の人々に読まれてきた。二十一世紀はグローバリゼーション時代になっているが本書の刊行は有島武郎と魯迅文学の伝播にいささかなりとも役割を果たすことができるだろう。―本書の「後序」より
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【推薦のことば】
康鴻音氏の仕事(実績)は日本文学研究学界においても十分注目されるものであり、彼女の仕事が公刊されることで、日本文学研究に寄与するところは極めて大きいと言えましょう。
現今の世界情勢はきわめて不穏な様態を見せています。有島も魯迅も差別を拒否し、平和を求めた人でした。真の知性、理性が求められる現状において、有島と魯迅を今に蘇らせて人間の生き方を考えるよすがともなれば、本書刊行の意義はさらに倍加されるでしょう。
康鴻音氏の仕事を高く評価する者として、彼女の仕事が公刊されることで有島・魯迅研究の進展も期待されることを私は信じて疑いません。
--渡邊澄子・大東文化大学名誉教授
氏は有島と魯迅との比較研究によって、日本近代文学研究に一つの新しい分野を切り拓いた、といってよい。多くの人に本書が読まれることを願ってやまない。
--石丸晶子・東京経済大学教授