読者の要望により、チャイニーズドラゴン新聞に掲載された『
日中中日翻訳必携』書評記事を転載させて頂きます。改めてチャイニーズドラゴン新聞をはじめ、関係者の皆さんに心から感謝いたします。
日中中日 翻訳必携
武吉次朗 著
中国語を学んでいる人にとって、「翻訳」は日常的な作業として頭の中で繰り返している作業であろう。しかし、単に中国語を日本語に、または日本語を中国語に「書き換える」だけでは「翻訳」にはならない。著者は「翻訳とはある言語で表現された情報を別の言語の等価な情報に置き換えること」と定義したが、「等価な情報」というのが至難の業であり、奥の深いものだということが、本書に余すところなく網羅されている。
あいまいで情緒的な日本語と断定的で論理的な中国語の間には、それぞれの文化の違いがあり、そのまま訳したのではどちらにとっても、文字や言葉が内包している微妙なニュアンスを正しく伝えることはできない。時には語順を変えたり、原文にない言葉で補い、原文にある言葉を省略しながら「等価な情報」として伝えていくのが翻訳だ。
著者は「コッテリ中華の中国語と、お茶漬けさらさらの日本語」をキーワードに、項目ごとに豊富な例文をあげて、翻訳のノウハウを軽妙かつ丁寧に解説した。中でも「良い訳文」と「良くない訳文」を対比させている点などはユニークで、むしろ日本語表現力の勉強としても大いに役立つところだ。
第1章最後の「私の学習体験談」は、まさに翻訳の達人が蓄積した財産を惜しげもなく提供したもので、読者にとっても含蓄に富む貴重な財産になるだろう。
日本僑報社 価格1800円十税