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日本僑報電子週刊 第664号 2007年8月1日(水)発行
http://duan.jp 編集発行:段躍中(duan@duan.jp)
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◇第五回華人学術賞受賞作品◇
●呉懐中著『大川周明と近代中国』刊行特集●
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編者より
「大川と中国」の謎の解明
-これまで行われていなかった、大川周明の対中国認識や行動の特質
中国との関わりに対する全体的、体系的把握
大川周明は、「右翼の思想家」「満蒙侵略の鼓吹者」「日本における
インドやイスラム研究の先駆者」として知られています。また、戦犯裁
判(東京裁判)において、前に座っていた東条英機の禿頭をぴしゃりと
叩いたことを知っている方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
大川研究は、今日まで多くの蓄積があります。しかしながら、「満州
事変」との関わりについては強調されるものの、中国との全体的な関わ
りについてはこれまで研究されていませんでした。
大川の中国との関わりは、大川の活動の一部です。ですが、その重要
性は大きいものがあります。筆者が指摘するように、近代日本や日中関
係史においてかなりの重要性を持った人物に、政治的・思想的にどのよ
うな特質が内包されていたかを究明することは、これまで描かれてこな
かった大川の全体像、並びに近代日本の対外観や日中関係の特質を深く
理解する視座を与えてくれます。
また、実学を目指した本でもあります。昨今の日中関係をギクシャク
させている要因の1つに歴史問題があり、新たな日中関係を模索する時
期が来ているように思えます。
筆者は、
「新しい中日関係の秩序像が切実に求められている中、激動期におけ
る個人や集団の問題点を含んだ歴史的模索と経験を振り返って検討する
意味は少なくないであろう」
と述べています。本書が日中両国に向けた研究成果を発信することで、
日中近代史における共通認識の形成に寄与することでしょう。
学術的な成果、また実学における成果の両面を踏まえて、第五回「華
人学術賞」の授与がふさわしいと判断いたしました。
「華人学術賞」(中国人博士文庫として出版)は、2002年から設けた
賞です。日中関係における学術研究を促進させるために、日本の大学院
に在籍する(した)留学生の研究を奨励することで、日中両国に貢献で
きる人材が育つよう、促進することが目的です。
日本の出版事情により、留学生の博士論文や修士論文の出版は困難で
あり、特に修士論文はほとんど刊行されることはありません。しかし、
日本で学び、学術的に価値を上げた成果が埋もれてしまわないよう、優
れた論文を刊行する意義は高いのでは、と考えております。
最後に、和田先生と村田先生のご推薦に心から御礼を申し上げます。
大川周明と近代日中史との関わり。
ご一読賜りますよう、お願い申し上げます。
段躍中@2007.7.31
(いままで刊行した7冊の博士論文は以下のページにあります)
http://duan.jp/item/c11.html
http://book.duan.jp/hks.htm