日 時: 2007年11月17日(土) 午後1時30分~4時30分
場 所: 東京芸術劇場 中会議室(5階)
演 題: 「新中国に貢献した日本人たち―中国を選択した日本人女医葉綺先生を中心に」
講 師: 大野 幸子 先生(ノンフィクション作家・『葉綺』著者)
司 会: 段 躍 中(日本僑報社・日中交流研究所)
会 費: 一人 ¥1,000 (当日・茶菓子代)
■講演内容■
日本人でありながら自ら葉綺という中国名を名乗り生涯を中国で生きた野崎綾子。満鉄に勤める父がいる中国大連へ母に伴われて行ったのは、満州事変が勃発した三年後の一九三四年、五歳の時だった。
満鉄の幹部社員を父に持ち中国で何不自由のない恵まれた環境下で育つが、中国大陸で推し進めていた日本の植民地政策に批判的であった父は、一九四四年満鉄を辞し吉林で牧場の経営を始める。一年後に第二次世界大戦の終結を迎え一家は帰国を余儀なくされるが、綾子だけは「中国に残りたい」と言って両親を驚かせる。
敗戦の玉音放送を聞いた十五歳の少女を貫いたのは「騙されていた」という思いだった。「騙されたのは周りに流されて自分で考えることをしなかったからだ。これからは自分の目で見て、自分の耳で聞き、自分の頭で考え、自分の意志で人生を切り開いていこう」吉林の街に進駐していた共産党軍の「八路軍」兵士や周りにいた若い共産党員たちから聞く戦争の真実は、カチンと音を立てて目が開くほど衝撃的なものだった。綾子は「中国に留まり新中国建設のために働こう」と決心する。父は強く反対したが綾子の気持ちは変わらなかった。そんな娘を信頼できる共産党幹部に託して、父は家族を連れて一九四六年日本に帰国する。「八路軍」に衛生兵として入隊した綾子は、間もなく始まった解放戦争で生死をさ迷うような激戦を体験する…。
★『葉綺―中国を選択した日本人女医』目次★
第一章 プロローグとして
第二章 回顧録
一 一時帰国を前にして
二 中国で育つ
三 「八路軍」の兵士として
四 ハルビン医科大学へ進学
五 鞍山市第一病院へ赴任
六 政治闘争の始まり
七 文化大革命の嵐
八 四十年ぶりの日本
第三章 エピローグにかえて――葉綺先生のその後
■講師略歴■
大野幸子(おおの さちこ)
1948年、栃木県生まれ。
大学卒業後、出版社編集部勤務を経て結婚後フリーランスに。
夫の在外研究先である北京大学で日本語教師を勤める。
日本に帰国後、ボランティアで『聞き書き』の本の作成に従事。
■参考資料■
『新中国に貢献した日本人たち』(中国中日関係史学会編、武吉次朗訳)
『続 新中国に貢献した日本人たち』(中国中日関係史学会編、武吉次朗訳)
『永遠の隣人―人民日報に見る日本人』(孫東民・于青編著)
(文責 段躍中)
■会場のご案内■
東京芸術劇場 東京都豊島区西池袋1丁目8番1号
TEL 03-5391-2111
http://www.geigeki.jp/