13日午後確認した情報です、ありがとうございます。
中国で「留日派」活躍 人材は先細り気味
中国で開会中の全国人民代表大会(全人代=国会)や政策助言機関の人民政治協商会議(政協)で日本留学経験者が少なくとも九人活躍している。「留日派」と呼ばれる彼らは日本語も堪能で、日本にとって心強い存在だが、欧米留学組に比べると政界進出は少なく、人材も先細り気味だ。
▽政界のパイプ役
「在日同胞と日本人によろしく伝えてください」
「必ず伝えます」
胡錦濤(こ・きんとう)国家主席は七日、政協の帰国華僑代表団と会見した際に潘慶林(はん・けいりん)委員(54)と談笑した。
潘委員は一九八五年に日本留学。今は北京で投資コンサルタント業を営む傍ら、日中の政界の橋渡し役として奔走する。「日中関係が悪化すると政府間外交は硬直しがちだが、留日派は民間外交の立場で柔軟に動ける」と話す。
安倍晋三前首相や小沢一郎民主党代表らとも交流がある。日本人の妻、由美子(ゆみこ)さんとは留学中に知り合った。
▽留学は80年代
政協では、蒋暁松(しょう・ぎょうしょう)委員(56)も日中政界に人脈を持つ留日派だが、ほかは上海の同済大学教授の蔡建国(さい・けんこく)委員(54)ら学者がほとんど。全人代の留日派である李建保(り・けんほ)代表(48)も海南大学学長で、実態は政治家というより教育界の代表に近い。
留日派の多くは、中国が改革・開放政策にかじを切った直後の八〇年代に来日した苦学生。潘委員は「七八年の故トウ小平(とう・しょうへい)氏の訪日に感動し、先進的な日本から学びたい」と日本を選んだ。八九年に帰国したが「自分を育ててくれた日中両国の役に立ちたい」とこだわりを持ち続けてきた。
八〇年代、日本は中国にとり最も身近な先進国で、日中関係も「蜜月」。日本は多数の中国人留学生を受け入れた。日本でいま活躍する在日中国人も、この世代が多い。
開放政策以降、海外留学生は八十万人を超え帰国者は二十万人、うち三万人は留日派とされる。
ただ共産党が牛耳る中国で全人代代表や政協委員の政治力は弱い。閣僚クラスに留日派はまだいないが、欧米留学組からは米国で学んだ周済(しゅう・さい)教育相、ドイツに留学、就業経験のある万鋼(ばん・こう)科学技術相らが誕生している。
▽安全保障
在日中国人の動向に詳しい日中交流研究所の段躍中(だん・やくちゅう)所長は「留日派の(政界での)出世は遅れている」とした上で、原因について中国の「対米重視」と、日本文化の影響を挙げる。「米留学組はマイクを奪っても自己主張するが、留日派は出しゃばるのは良くないと遠慮してしまう」。中国は歴史的経緯から反日感情が根強く「留日派は表だって動きにくい」(李代表)面もある。
米政府は優秀な中国人留学生を積極的に受け入れて米中間の人脈を広げているが、日本政府にそうした戦略はない。中国人学生の間にもかつてのような「日本留学熱」はなく、欧米志向が強まっている。
段所長は「日本の立場を理解している留日派を育てることは日本にとって有利。ソフト面での安全保障になる」と指摘。「日本政府がもっと留日派を応援してほしい」と話している。(北京、共同=塩沢英一)