2004年、阿南・ヴァージニア・史代先生が中国の五洲伝播出版社から6カ国語で出版された『千年の都北京 樹と石と水の物語』が、北京オリンピックを前に、待望の2008年・日本語版に生まれ変わりました。
オリンピックを前に、目を奪われるのは北京の発展です。鳥の巣(北京五輪メインスタジアム)や開通したばかりの地下鉄など、威風堂々の近代設備が毎日のように完成しています。発展を喜びながらも、面影はいずこといった寂しさを感じている方も多いのではないでしょうか。
本書は、「樹木と石と水」という三つの自然の相をキーワードに、豊富な写真と文章が北京の過ぎ去った日々を再発見する旅に、やさしく誘ってくれます。そして、タイトルでは語られていないもう一つのキーワード「人」との語らいが、あたかも今北京にいるような気持ちを醸し出します。
2008年版は、北京オリンピックの観戦のため、あるいはそれと前後して訪中する人々に北京を紹介する目的で、刊行されています。そのため、先生は今春、本書で取り上げたすべての場所をあらためて再訪され、最新のデータを元にまとめられています。「おすすめ樹の散歩」「私の新北京八景」などの地図も充実しているので、探索が可能です。
本書のご執筆には、長い蓄積がありました。ご存じのことと存じますが、阿南・ヴァージニア・史代先生は歴史学者であり、現在、テンプル大学日本校で中国史の教鞭をとり、2006年からは北京市旅游局顧問に就任されていらっしゃいます。
夫君は前駐中国日本大使阿南惟茂氏です。先生は阿南前大使とともに北京に3回駐在され、1983年以来、北京全域の史跡、古い集落、老樹、聖地・遺跡を調査され、人びとと話し、写真に収めてこられました。
一個の石、一本の木、一本の泉水。25年もの歳月を重ねて織り上げた、北京の魂への賛辞が本書にこめられています。どうぞ、お手にとってお読み下さい。

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